2019 Fiscal Year Research-status Report
妊婦のやせに伴う胎生期発育不全が児の認知神経機能に及ぼす影響:脳画像による検討
Project/Area Number |
19K14175
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
岩渕 俊樹 浜松医科大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (20711518)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳画像研究 / 認知発達 / 神経発達 / 出生体重 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は胎児期の発育不全のマーカーとされる在胎不当過小(small for gestational age: SGA)に着目し、それが認知神経発達に対して及ぼす悪影響を評価する。SGAは母親の妊娠前および妊娠中のやせと関連することが先行研究により指摘されており、これらの間の関連を示すことで女性の過剰なやせ願望に警鐘を鳴らすことを目指す。浜松母と子の出生コホート(Hamamatsu Birth Cohort: HBC)研究に参加した児をSGA児349名、非SGA児870名に分類し、神経発達の遅れとの関連を調査したところ、幾つかの神経発達マイルストーン(台からの飛び降り、両足跳び、2語文、「ダメ」の理解、始語)においてSGA児と非SGAの間に有意な到達月齢の差が見られた。さらに、SGAがこれらの神経発達の遅れを介して、より後の適応行動における問題につながることが媒介分析(mediation analysis)により示された。 さらに、健常成人を対象として、MEGA-PRESSシークエンスを用いた磁気共鳴スペクトロスコピー(magnetic resonance spectroscopy: MRS)による脳内のGABA濃度計測、および機能的核磁気共鳴画像(functional magnetic resonance imaging: fMRI)を用いた実行機能・言語機能に関わる脳機能計測の実験環境および解析プログラムを整備し、予備的検討を開始した。実行機能および言語機能に関わるとされる下前頭回のGABA濃度と、実行機能課題・言語理解課題を遂行中の同領域の賦活、および課題成績の間の関連について検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では2019年度に浜松母と子の出生コホート研究の参加者に対するMRI計測を開始している予定であったが、認知機能の評価に使用する実験課題の策定および計測系の構築にやや遅れが生じたため、健常成人を対象とした予備的検討に留まった。一方でSGAが認知発達の遅延に関わること、それがさらに後の適応行動の問題に関連することを示し、本研究の方向性を支持する一定の示唆が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果をもとに、HBC研究参加者を対象とした解析をさらに推進する。認知発達および適応行動の問題に対するSGAの関連に加え、母親の妊娠前の低体重および妊娠中の体重増加の不足の関連についても引き続き多角的な調査を行う。加えて、MRIを用いた脳構造および脳機能計測により、認知発達遅延の背後にある神経メカニズムについての検討を進めていく。
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Causes of Carryover |
本研究にかかる予算として、HBC研究参加者を対象としたMRI計測費用を計上していたが2019年度はこの実施に至らなかったため、次年度に使用することとした。当初計画において予定していた計測を2020年度より開始し、随時使用していく。
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