2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigating and proposal of occurrence of moral licensing effect focused on psychological entitlement
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19K14359
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
古川 善也 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 助教 (50826477)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | モラルライセンシング / 道徳 / 道徳アイデンティティ / 向社会性 / 制御焦点 |
Outline of Annual Research Achievements |
個人・組織の道徳行動の促進として道徳教育,経営倫理教育などが取り組まれているが,このように社会・教育政策としての道徳行動の推進は,必ずしも人の道徳性を育み,不道徳行動の抑制に繋がるわけではない。道徳行動の実行は時として逆に不道徳行動を促進してしまうことさえある(モラルライセンシング効果)。本研究では,モラルライセンシング効果に着目し,先行の道徳行動が後の不道徳を促進する“ライセンス”となるか,あるいは更なる道徳行動を引き起こす一貫性をもたらすか,その分岐のプロセスを説明するために,1つの媒介要因(心理的Entitlement)と2つの調整要因(制御焦点と価値)から成る仮説モデルを提案・検証することを目的とした。 3年目である2021年度はモラルライセンシングの操作が道徳判断に及ぼす影響を検討する研究を実施するにあたってVR機器を用いてより臨場感のある体験の中での意思決定を検討するため,それに先立ってのVR機器を用いての予備的な実験を実施した。これは,道徳判断がポジティブ感情に影響されることを踏まえて,VR空間での体験そのものによるポジティブ感情の生起が提示した実験状況に干渉を及ぼさないことを確認することを目的とした。参加者にはVR空間上でサイバーボール課題を行ってもらい,そこで排斥条件(あるいは受容)の操作を受けてもらった。その結果,通常のサイバーボール課題と同様に,VR空間における呈示でも排斥操作によってネガティブ感情が強まることが示され,操作場面の呈示にVR機器を用いての方法が適用可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究計画通りには研究を遂行することができなかった。これは研究環境の変化から,研究実施を可能とするまでに時間を要した点,新規の業務内容への対応に時間を要したために,研究実施に用いることのできる時間が変化し,それに対応をしきれなかった点が理由として挙げられる。道徳判断を用いた研究においてVRを用いる方法を取り入れるに先立ち,VRでの実験を実施するための実験を実施していたため,その作業に時間を要した。また,道徳判断をVR空間で提示するためのプラグラムの構成に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度については,実験室実験により【研究3】(Entitlementの不道徳行動への影響を道徳性,向社会性の強さが抑制するかの検証),【研究4】(Entitlementが単に不道徳行動を引き起こすのではなく,行動に自由度を付与し,規範に反して選好に従った選択を可能にするかの検証)を実施していく。ただし,今後も行動の制限が長引いていくことが予測されるため,参加者を実験室に呼んだ上で実験課題を実施する手続きを行うことは困難となる可能性がある。そのため,クラウドソーシングサービス等を利用した参加者募集を行うWeb上で実験を実施できるように手続きの修正を行っていく。また,並行してこれまでに得られた結果を整理し,まとめていく。
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Causes of Carryover |
2021年度に発表を予定していた学会がオンライン開催,あるいは中止となり,その参加費,移動費,宿泊費が使用されなかったため,その分の研究費を次年度(2022年度)に持ち越した。持ち越した研究費は海外学会での研究公表のためにあてる。
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