2019 Fiscal Year Research-status Report
学校における居場所づくりの実践と論理:通信制高校のフィールドワーク
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19K14399
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
神崎 真実 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 研究員 (70816553)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 居場所 / 高校 / 学校適応 / 居方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、不登校経験者を積極的に受け入れる通信制高校をフィールドとして、学校における居場所づくりの実践と論理を明らかにすることである。 本年度は、様々な学校種の教職員にインタビューを行い、カリキュラムマネジメントや教育的資源の制限がある中で、いかにして支援を成り立たせているのか、その論理について検討した。それぞれの教育関係者が重視する事柄は異なるものの、彼らの視点を大別すると、実践を省察するにあたって立ち返る理論やモデルがある場合と、個々の状況に応じて調整を重ねる場合があった。現在は、両方のケースを区別したうえで、教育関係者の支援の論理について分析を進めている。 生徒の学校経験については、より広い文脈での経験(アルバイト経験、家庭の事情、宗教、習い事など)とあわせて調査を進めることで、学校を相対化しながら生徒の学びを捉えることを試みた。より広い文脈から学校経験を理解することについての理論的考察は、英語論文としてまとめた(2020年5月公刊)。インタビュー調査の結果は、論文としてまとめている。 調査を予定していたビデオ録画による生徒の「居方」の調査は、2019年度入学者の対人緊張の高さが目立ったため、中止することとなった。このことは結果的に、フィールド研究における侵襲性の問題や、質的研究全般における協力者との関係性について考察することへと繋がった。生徒の「居方」については、今後、協力者と調整しながら方法を工夫することが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、ビデオ録画ならびに複数人での参与観察は不可となったため、日々の生活の中で展開する生徒のマイクロな学校経験や、言葉にならないことば(身振りや表情など)を含んだ居方については、調査が進んでいない。しかし、このことを機にフィールドワークという方法論の特徴や限界について省察し、現在は代替となる調査方法を検討している。当初予定していた回数は重ねられていないが、フィールドには出向いていたため、居方について予備的な調査は進んでいる。また、インタビューに基づく生徒の学校経験と、教職員の居場所づくりの調査は、予定通り進行し、予定よりも早く分析が進んでいる。総じて、研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナの影響でフィールドとの連絡や調整を中断せざるを得なくなった。9月入学案なども含めて学校現場は不安定な状況におかれているため、混乱が落ち着くまでは調査を差し控える。対面での指導や支援が難しくなりつつある今だからこそ、通信制高校がこれまで取り組んできた「通信」という学びの方法に注目が集まっている。本研究は「通信」という学びの方法に特化したものではないが、フィールドが「通信」を重視する方向へと舵を切った場合は、「通信」を活かした居場所づくりの研究に切り替える必要がある。こうした可能性も考えつつ、現場と相談しながら調査を進めていく。
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Causes of Carryover |
PCの故障により、予定よりも多く物品費がかかってしまったため。
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Research Products
(8 results)