2022 Fiscal Year Research-status Report
舞踊の発達的起源の検討:舞踊の階層性に関する発達認知科学的研究
Project/Area Number |
19K14477
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
山本 絵里子 相模女子大学, 人間社会学部, 講師 (50572202)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 舞踊 / ダンス / リズム / 階層性 / 乳児 / 発達 / 身体表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、舞踊行動の根底にある身体運動の階層構造を創作する能力の発達過程を明らかにすることである。2022年度は、舞踊行動という身体表現活動により、どのような能力が獲得されるのか検討するために縦断研究を実施した。本研究では、乳児が生後9カ月、12カ月、18カ月そして24カ月の時点で新版K式発達検査を実施した。また、養育者を対象におどりの発達に関する質問紙調査と遠城寺式乳幼児分析的発達検査を実施した。そして2つの成果を得た。 成果1)生後9カ月時点における舞踊行動及び喃語の関係性を検討した。舞踊行動と喃語にはリズムの階層構造を有するという共通の特徴がある。一般化線形モデルを用いて、生後9カ月時点での舞踊行動の出現と喃語の出現の関係を分析したところ、K式の項目(運動姿勢、認知適応、言語社会)ごとの得点に関係なく、生後9カ月時点で舞踊行動を表出していた乳児は、舞踊行動を表出していない乳児と比較して、生後9カ月時点で喃語を表出している割合が高かった。 成果2)生後9カ月時点における舞踊行動の表出能力と12カ月から24カ月時点の認知発達との関係を検討した。一般化線形モデルを用いて、生後9カ月時点での舞踊行動の出現の有無と12カ月から24カ月の認知発達の関連性を分析したところ、K式の項目(運動姿勢、認知適応、言語社会)ごとの得点に関係なく、生後9カ月時点で舞踊行動を表出していた乳児は、舞踊行動を表出していない乳児と比較して、生後24カ月時点での認知適応能力と言語社会能力が高かった。 本研究の成果は、舞踊行動の根底にある身体運動の階層構造を創作する能力に関する発達モデルの枠組みを提供する点で重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、舞踊行動の根底にある身体運動の階層構造を創作する能力の発達過程を明らかにするため、縦断的研究を開始するとともに、1つの主要な成果を得た。具体的には下記の通りである。 研究計画1では、乳幼児期の自発的な身体運動の構造を縦断的及び横断的に分析し、乳幼児期の身体運動の階層構造の発達的変化の解明を目指している。本年度は、舞踊という身体表現活動によりどのような能力が獲得されるのか検討することで、身体運動の階層構造の発達に影響を与える認知的要因を明らかにした。本研究の成果は、舞踊行動の根底にある身体運動の階層構造を創作する能力に関する発達モデルの枠組みを提供する点で大変重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、舞踊行動の根底にある身体運動の階層構造を創作する能力の発達過程の解明に向けて、生後9カ月から生後12カ月までの舞踊行動の複雑性とそれらの発達に影響を与えると考えられる認知的要因の関係性を分析する。 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のため、当初予定していた実験室や教育現場での実験の実施が困難となっていたが、2022年度の後半より当初予定していた実験が再開された。そのため、次年度の前半まで実験の実施に重点を置く予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、本年度において、当初予定していた実験室における縦断研究を実施することができなかった点が挙げられる。そのため、人件費・謝金が次年度使用額となった。
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