2019 Fiscal Year Research-status Report
Stochastic processes of multiple-particle systems with internal degrees of freedom: dynamics and statistical properties
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19K14617
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
アンドラウス ロバジョ 中央大学, 理工学部, 助教 (10771644)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 多粒子確率過程 / 内部自由度 / 交換相互作用 / 長距離相互作用 / ルートシステム / ダンクル過程 / ダイソン模型 / Wishart過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の研究成果は以下の通りである。 (1)ダンクル過程でのジャンプ過程は逆温度ベータの臨界値1にて1粒子あたりのジャンプ頻度は相転移を示すことを報告し、ダンクル過程自体の粒子衝突の有無との関連を解明した。つまり、ベータが1未満のときは粒子の衝突がほぼ確実に発生し、ベータが1以上の時はほぼ確実に衝突が発生しないことを考慮し、衝突とジャンプ頻度の関係を明らかにした。また、ベータが1以上の秩序相における緩和ダイナミクスを調べ、その緩和の振る舞いは冪乗法則に従うことを示した。冪乗指数の最大値は1であることが明らかにした。 (2)秩序相における緩和過程の冪乗指数のベータ依存性に着目し、低温(大ベータ)ではベータが増加するにつれて指数は減少することを示した。一般的にジャンプ過程ダイナミクスはとある遷移行列に支配され、緩和過程の冪乗指数はその行列の最小固有値で与えられる。その固有値問題の解を求めるのは困難であるが、ダイソン模型に相当するA型ジャンプ過程の遷移行列は絶対零度において可積分系で有名なPolychronakos-Frahmスピン鎖のハミルトニアンと一致することを発見し、可積分系の手法を用いることで遷移行列の最小固有値が1/2であることを示した。これは緩和過程の冪乗指数は1/2と1の範囲内であるという非自明な性質を導出した。 (3)絶対零度ではジャンプ過程の遷移行列はダンクル過程のゆらぎを記述する逆共分散行列と同様な構造をもち、逆共分散行列のスペクトルを求めることでジャンプ過程の絶対零度での緩和が理解できる。そこで、A型ダンクル過程とWishart過程に相当するB型ダンクル過程の絶対零度での逆共分散行列のスペクトルを導出し、両方の場合の固有値は等間隔になっていることを証明した。これはA型とB型ジャンプ過程の緩和ダイナミクスは両方1/2以上で1以下の冪乗指数を示すことになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の初段階にて秩序相でのジャンプ過程ダイナミクスの理解を深めるために、絶対零度における緩和の冪乗指数を調べた。この件に関して、A型ジャンプ過程の絶対零度緩和の結果についての論文を完成し、A型とB型ダンクル過程における絶対零度でのゆらぎの逆分散行列のスペクトルをVoit氏(ドイツ)との共同研究で求めた。これはもう一本の論文で報告している。これらの研究成果はStatPhys 27(ブエノスアイレス)、2019年確率理論シンポジウム(慶應義塾大学)と日本物理学会第75回年次大会(2020年)にて報告した。 以上の課題のため研究の流れを変更し、現在は無秩序相におけるダイナミクスを調べている。数値手法の開発について、数値シミュレーションのプログラムは完成で、その働き方や結果の妥当性を確認している。更に、交換相互作用入り確率過程の厳密解析をHufnagel氏(ドイツ)との共同研究を2020年2月に開始した。特に、高温(逆温度ベータ1以下)における粒子衝突の性質を調べている。そこで、粒子衝突とジャンプの関係を用いることでジャンプ過程の無秩序相におけるダイナミクスの解明が期待できる。 また、B型ダンクル過程に相当するWishart過程の高温かつ無限粒子極限における極限測度に着目し、Trinh氏(早稲田大学)との共同研究は2019年9月に開始した。この課題にて粒子衝突の統計的なかつ動的な性質を調べることが目的であり、ジャンプ過程の解明につながるであろう。 最後に、絶対零度におけるダンクル過程の研究を続けており、2020年1月にVoit氏とHermann氏(ドイツ)を訪れた。De Boor-Saffが導入したデュアル直行多項式を用いることでダンクル過程の統計的な性質を完全に理解できることを発見した。この件についての論文を完成させるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
無秩序相でのジャンプ過程の課題を優先し、完成させた数値シミュレーションプログラムの妥当性を確認する。その方策として、上記のHufnagel氏との共同研究においての解析手法で求めている一次元のダンクル過程の振る舞いはシミュレーションで再現できているかを確認する。これは高温(ベータは1以下)でのジャンプ過程の振る舞いの理解につながるもので、作動確認ができたらプログラムを系統的に変えることで様々なジャンプ過程の振る舞いを調べることができるようになる。この件とは別に、上記のVoit氏とHermann氏とDe Boor-Saffデュアリティについての研究成果をまとめた論文を完成させ、Trinh氏との高温Wishart過程の研究を続ける。
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Causes of Carryover |
この助成金を昨年度末に参加した日本物理学会第75回年次大会で使うつもりだったが、コロナウィルス感染症拡大で中止され、使えなかった。 2020年度、HPCのGPUアップグレードを予定しており、この助成金をそのために使う予定である。
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