2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14712
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
木坂 将大 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (10639107)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ブラックホール / 活動銀河中心核 / 高エネルギーガンマ線 / 粒子シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
ブラックホールから相対論的速度で放出されるジェットと呼ばれるプラズマ流の生成機構は宇宙物理学最大の謎の一つである. 本研究では, 特に相対論的ジェットへの物質注入機構としてブラックホール近傍での電磁カスケード現象に注目し, 粒子の加速、放射とプラズマの生成過程を取り入れた一般相対論的プラズマ粒子シミュレーションコードを用い, 相対論的ジェットの生成機構の解明を目指している. 1. ブラックホール周囲の降着円盤からの放射の光度が短時間だけ弱くなることで, 電磁カスケードによる磁気圏内のプラズマの供給不足が起きてガンマ線放射光度の急激な増加が起こることを発見した. この結果は観測されているガンマ線データを再現しうることがわかった. また, ガンマ線の放射効率があまりに高いとプラズマの供給不足を補うための時間が長くなることから, 明るいガンマ線ほどこれまで考えられているより例えば質量の大きいブラックホールが起源であるなどの新たな示唆も得られた. 2. これまでの銀河中心ブラックホールに加えて, 星質量ブラックホールを対象とした数値シミュレーションを行い, 電磁カスケード起源のガンマ線のエネルギーは質量が小さいほどわずかに低いエネルギー帯域で明るいなどのブラックホール質量依存性を明らかにした. これは, 降着率が低くてまだ見つかっていない銀河系内のブラックホール探査に重要となる. 3. これまでの数値シミュレーション結果の解釈をさらに進めるためのより詳細な解析的モデルを構築した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の主な目標は, 現実的な条件に対するブラックホール近傍から観測されている時間変動の激しいガンマ線帯域の増光現象(フレア)やその中の粒子数が再現可能であるかを明らかにすることである. ブラックホール近傍の環境変動によりプラズマの運動学的振る舞いや観測されるガンマ線光度がどのように振る舞うかについて、またそのブラックホールの質量依存性に対する定量的な評価が得られたという進展はあった. しかし, 現実に存在しているブラックホール周囲からのガンマ線が磁気圏に入っていることによる粒子注入の効果, 粒子慣性の効果を取り入れた場合の結果に対するまとめは現段階で遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き, ブラックホール近傍から注入されるガンマ線のよる粒子生成の効果, 粒子の運動に対する慣性力を考慮した数値シミュレーションを行う. 前者はより現実的な状況となり, ブラックホール磁気圏で電磁カスケードが起こる条件を明らかにする目的がある. 後者は加速電場を遮蔽する粒子の運動を阻害する効果が期待でき, 観測されるガンマ線光度を増加するなどが期待できる.
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Causes of Carryover |
数値計算コードの拡張を目的とした研究打ち合わせのための海外機関への滞在が実現できなかった. 本年度は状況によるがこの滞在のため、さらに得られた成果を発表するための旅費を計上する. また, 数値シミュレーションを追加で行う必要があるため, これによるデータ解析とバックアップのためのハードディスク購入のための経費を計上する. さらに得られた成果を公表するための国際学術誌への論文掲載量を計上する.
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Research Products
(18 results)