2022 Fiscal Year Annual Research Report
Strong dynamics as an origin of the light Higgs boson and phenomena beyond the standard model
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19K14714
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳生 慶 大阪大学, 大学院理学研究科, 助教 (30825097)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複合ヒッグス / CPの破れ / 強結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
CP対称性の破れ(CPV)は宇宙のバリオン数非対称性を説明する上で重要な要素の中の一つである。標準理論では、小林・益川行列に現れるCP位相がCPVの源となるが、その大きさは現在のバリオン数を説明する上では小さすぎることが知られている。付加的なCPVの源をもつシンプルな新物理の例として、ヒッグス2重項場を2個含む模型(2HDM)がある。実際に2HDMの枠内で、電弱バリオン数生成のシナリオから、観測されたバリオン数を説明できることが既に知られている。ただし、このシナリオ自体はヒッグス質量の階層性問題については全く言及していない。 本研究では階層性問題を解く有望な可能性としてコンポジットヒッグスのシナリオに着目し、特に低エネルギーでのヒッグスセクターが2HDMとなる可能性を調べた。これはテラスケールにおける大局的対称性の自発的破れとしてSO(6)→SO(4)×SO(2)を考えることで実現することができる。解析の結果、このシナリオにおいてCPを破る位相をヒッグスポテンシャルに導入することが可能ではあるが、電弱精密実験からの制限によって許容されるCPVは最大でもバリオン数生成に必要な典型的なサイズに対して一桁程度小さくなることが分かった。 最終年度ではこの結果を受けて、2HDMを低エネルギーに導く別の可能性としてSO(9)→SO(8)の破れを伴うコンポジットヒッグスのシナリオに注目し同様の解析を進めた。このシナリオでは電弱精密測定に大きく寄与する次元6の演算子の出現を対称性から禁止することができる。現時点では、低エネルギーでのヒッグス-ゲージ結合や湯川相互作用を含むラグランジアンの構築が完了し、有効ポテンシャルを計算するための準備が整ったところである。今後の展望として、このシナリオにおいて電弱バリオン数生成の機構を適用し、宇宙のバリオン数非対称性問題が解明されることが期待される。
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Research Products
(12 results)