2019 Fiscal Year Research-status Report
理論と観測で相補的に迫る原始惑星系円盤構造形成から惑星形成に至る新たな描像
Project/Area Number |
19K14764
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
高橋 実道 国立天文台, 科学研究部, 特任研究員 (80838566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 磁気制動 / 輻射輸送計算 / 電波天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、理論的研究として原始惑星系円盤形成・進化と惑星形成との関係についての研究、観測的研究として原始惑星系円盤の物理構造についての研究を行う計画である。これらのそれぞれについて、概ね順調に研究が進んでいる。 まず、理論的研究として、原始惑星系円盤形成の解析的モデルの構築を行った。円盤に降着するエンベロープに働く磁気制動のモデルを3次元MHDシミュレーションの結果と詳細に比較した結果、落下過程でのエンベロープの非球対称性が重要であることを新たに発見した。これまでに構築していた磁気制動のモデルにこの効果を取り入れ、シミュレーションを再現可能なエンベロープの解析的モデルを構築した。この結果を元にして、円盤形成過程の全容を明らかにする統一的なモデル構築につなげることができる。この研究成果は研究会でも発表しており、現在論文化に向けて準備を進めている。 また、観測的な研究として、V1094 Sco の原始惑星系円盤の物理構造を明らかにする研究を行った。この天体は、中間赤外線での放射が弱く、電波で明るいという特徴を持っており、低温、大質量の円盤を持つことが示唆されていた。観測結果を輻射輸送計算と比較することで、観測を整合的に説明するためには円盤中でのダストの成長が進んでいるか、ダストが赤道面に沈殿していることが必要であることを示した。ダストの成長及び沈殿はともに惑星形成と強く関係しており、円盤進化と惑星形成の関係を理解する上で結果となっている。この成果については論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記載したように、本研究で計画していた、理論的、観測的研究の両方において研究が進んでおり、研究会発表などの形で成果を出すことができている。したがって、当初の研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、まず、原始惑星系円盤の長時間進化と惑星形成との関係についての理論的研究をすすめる。一年目に構築した理論モデルを元にして、惑星形成の元となる微惑星の形成過程と、円盤の形成進化との関係について研究を行っていく。 その後、モデル計算の結果と原始惑星系円盤の観測との比較を行い、観測結果の物理的解釈などの理解につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、新型コロナウイルスの影響で年度末の研究会がキャンセルされ、予定していた出張費が使用されなかったためである。この次年度使用額は、年度末に発表できなかった研究成果を発表するための出張費として使用する計画である。
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