2022 Fiscal Year Research-status Report
理論と観測で相補的に迫る原始惑星系円盤構造形成から惑星形成に至る新たな描像
Project/Area Number |
19K14764
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
高橋 実道 鹿児島大学, 理工学研究科, 特任研究員 (80838566)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 原始惑星系円盤 / 惑星形成 / 自己重力不安定生 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度の研究では、主に原始惑星系円盤の自己重力的分裂過程について研究を行った。原始惑星系円盤の自己重力的分裂は、連星系、褐色矮星、巨大ガス惑星形成のメカニズムとして注目されているが、これまで分裂条件は十分に理解されていなかった。申請者が行った過去の研究(Takahashi et al. 2016)では、自己重力による分裂条件は円盤の大局的な重力不安定性によって渦状腕が形成された後、「渦状腕構造自体が自己重力に対して不安定になる条件」で与えられることを明らかにした。この結果から、円盤分裂の条件の解明には、「重力的に不安定な渦状腕構造」を形成する条件を明らかにすれば良いことがわかっている。 原始惑星系円盤が重力的に不安定になり分裂しやすいのは、円盤形成過程で円盤に外からのガス降着がある場合である。そこで、本研究では、円盤へのガス降着の効果を取り入れた2次元流体シミュレーションを行い、円盤形成期における円盤の分裂条件について調べた。 円盤の大局的な自己重力不安定で形成される渦状腕構造は、渦状腕が作る重力トルクによる角運動量輸送を通して円盤のガス降着率と密接に関わっている。 そこで本研究では、質量降着率と渦状腕構造の関係を調べたところ、簡単な解析モデルと比較で整合的に説明できることがわかった。また、シミュレーション結果から、質量降着率、円盤半径が大きいほど分裂が起きやすいことが確認できた。 この研究成果は、天文学会年会や惑星科学会、研究会などで発表を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」で記載したように、2022年度は主に原始惑星系円盤の自己重力的不安定生について、数値シミュレーションを通して理解を進めることができた。そのため、研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2022年度で得られた円盤分裂についてのシミュレーション結果をより詳細に解析し、円盤に形成される渦状腕構造と円盤中の質量降着率の対応を物理的に明らかにする。そして、円盤形成過程での分裂条件を明らかにする。 また、渦状腕構造が形成された、形成・進化の初期段階にある円盤のシミュレーション結果について模擬観測を行い、実際の観測結果と比較を行う。 この比較を通して、形成過程にある円盤の進化について、観測と理論の両面から理解を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で十分な研究会への参加が難しく、次年度使用額が生じた。今後は状況が改善し、研究会も以前のようなオフラインでの開催に戻ることが期待されるため、これまで得られた研究成果を発表するために使用する予定である。また、研究成果の論文出版などの経費にも充てる予定である。
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