2020 Fiscal Year Research-status Report
Probing Intermediate-mass Black Holes in the Galactic Center with the Observations of High-Velocity Compact Clouds
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19K14768
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
竹川 俊也 神奈川大学, 工学部, 助教 (10827851)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 銀河系中心 / 分子雲 / 中間質量ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に野辺山45m電波望遠鏡の観測により取得したSiO J=2-1, H13CN J=1-0輝線等のデータを注意深くリダクションし、銀河系中心領域Central Molecular Zone全体にわたる非常に均質で良質な広域マップを作成した。また、継続してHCN J=1-0, HCO+ J=1-0輝線の観測を進めた。SiO輝線は星間衝撃波のトレーサーとして有用であるため、H13CN輝線やH13CO+輝線に対するSiO輝線の相対強度を調べたところ、高いSiO強度比を示す大きさが1 pc程度の小型クランプを多数発見することができた。今回新たに発見された高いSiO比を示すクランプの起源を探るために、MIPSGALサーベイに基づいて作成されたYoung Stellar Object (YSO)カタログとの比較を行ったところ、SiOクランプのうちのいくつかにはYSO候補が付随していることがわかった。45m鏡の空間分解能では、これらSiOクランプを空間分解するには至らないが、YSO候補との付随関係から、これらは大質量星形成に伴うアウトフロー天体の可能性がある。一方で、他波長域に対応天体を持たず著しく広い速度幅を有するSiOクランプの存在も確認された。これらは「高速度コンパクト雲」の範疇に属し、本研究課題の目標である中間質量ブラックホールとの重力相互作用の結果生じたものである可能性がある。 また、ALMAによって観測された2つの高速度コンパクト雲HCN-0.044-0.009およびHCN-0.085-0.094のマップを精査したところ、大きさが0.04 pcにも満たない超小型の高速度コンパクト雲を複数発見することができた。これらも他の高速度コンパクト雲同様に他波長に対応天体を持たず、中間質量ブラックホールの発見につながる可能性があるため、ALMAによる追観測を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
中間質量ブラックホールを内包している可能性がある高速度コンパクト雲HCN-0.044-0.009およびHCN-0.085-0.094について、より詳細に分子ガスの位置-速度構造を把握し、中間質量ブラックホールに対応する点状電波源を探査するための観測をALMAにて行う予定であったが、新型コロナウイルス蔓延の影響でALMAのオペレーションおよび観測提案の募集が延期・中止された。提案予定だった観測では、分子ガスの軌道運動の詳細解析により、"見えない質量"について力学中心(候補)からの動径方向の分布を把握することができ、軌道に内包された質量分布が動径に対して一定(=点状重力源の存在を示唆)かどうかを調べることで、高速度コンパクト雲を駆動している重力源がブラックホールか、広がった質量分布を持つ星団かを切り分けられることが期待される。取得済みのALMA cycle 5のデータを用いて上記の解析を試みたが、分解能が不十分であり軌道フィットの不定性が大きく、期待される結果は得られなかった。本年度提案できなかった観測は、現在ALMA cycle 8に提案中であり、これが採択され実行されれば、大きな進展が期待される。 並行して推し進めている野辺山45m鏡を用いた銀河系中心領域の大規模サーベイ観測については順調に研究が進んでいる。特に、SiO分子が相対的に強く検出される高速度コンパクト雲を新たに複数発見することができ、本研究の目的の1つである「高速度コンパクト雲のサンプル拡充」という点で満足のいく結果が出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在提案中のALMA cycle 8の観測が採択されれば、観測が実行され次第素早くデータリダクションを行い、分子ガス流の軌道運動解析にとりかかる。解析に必要なプログラムはすでにある程度構築済みであるが、適宜アップデートしてゆく。また、野辺山45m鏡の大規模サーベイ観測で取得したデータを精査し、観測対象とした輝線全てについてイメージングを完了する。ALMAの観測提案が採択されない場合は、野辺山45m鏡での観測で得られた結果についての解析を特に重点的に行う。また、次年度は本研究課題の最終年度となるため、成果を論文にまとめ研究期間内での出版を目指す。
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Causes of Carryover |
観測のため野辺山宇宙電波観測所への出張を計画していたが、新型コロナウイルス蔓延の影響により中止となった。また、全ての研究会・学会がオンライン開催となり出張の必要がなくなり、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、観測や学会・研究会・会議等への出席のための旅費として使用予定である。
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