2019 Fiscal Year Research-status Report
地殻変動・地震データの系統的解析に基づく非地震性すべりの地域性とその原因解明
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19K14809
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高木 涼太 東北大学, 理学研究科, 助教 (10735963)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スロースリップ / プレート境界地震 / 日本海溝沈み込み帯 / 相模トラフ / S-net / フィリピン海プレート |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年10月にデータ公開された日本海溝・千島海溝沿いにおけるケーブル式地震津波観測網(S-net)は、日本海溝沈み込み帯における地震発生機構や地球内部構造の理解に貢献すると期待される。しかし、海底に設置されているS-net観測点のセンサー設置姿勢・方位が不明であり、そのままでは観測データを十分には活用できない。そのため、本研究では、S-netの加速度計観測データに基づき、S-net観測点のセンサー設置姿勢・方位を推定した。150観測点全点において、設置姿勢・方位が精度良く推定され、観測データを上下成分と水平二成分に分解できることを示した。本研究の成果は、最先端の観測網であるS-netを使用した研究の加速、さらには、日本海溝沈み込み帯におけるプレート境界地震と非地震性すべりの理解のための重要な研究リソースとなると考えられる。 また、GNSSデータに基づき、相模トラフから関東地方に沈み込むフィリピン海プレート上面で発生するスロースリップイベント(SSE)の系統的検出を行った。その結果、1996年から2018年の期間において、Mw6.6-6.8程度の既知の房総沖SSEに加え、Mw5.9-6.5程度の小規模SSEの可能性があるイベントを25個新たに検出した。小規模SSEの多くは、既知の房総沖SSEの東に位置する。既知の房総沖SSEに比べて発生間隔は短くすべり量は小さいことから、安定すべりから間欠的なすべりへのプレート走向方向のすべり特性変化を示していると考えられる。また、2011年以降にSSEの発生数が増加しており、2011年東北沖地震以降のフィリピン海プレートの沈み込み速度上昇を反映している可能性がある。プレート境界型大地震を発生させる関東地方のプレート境界におけるひずみ蓄積・解放プロセスの理解に貢献する成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本海溝沈み込み帯における地球内部構造推定のために使用するS-net観測データを有効に利用する準備ができた。また、関東地方においては、これまで知られていなかった小規模なスロースリップイベントの検出に成功し、非地震性すべりの地域性を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き地震・地殻変動観測データの系統的な解析を行い、日本におけるプレート境界で発生する非地震性すべりの地域性とその要因を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究が進捗したことにより論文執筆中であったため、出版に際する英文校閲費・出版費として次年度に使用するため。
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