2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K14868
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
大久保 智 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部3Dものづくりセクター, 研究員 (30757349)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フラッシュ焼結 / Additive Manufacturing |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度の研究において,イットリア安定化ジルコニア(YSZ)粉体を1-10mmの厚さに積層しフラッシュ焼結実験を行ったところ,積層厚さ10-3mmでは局所フラッシュ焼結が可能であったが,1mmでは放電が生じるため十分に焼結をさせることができなかった.Additive Manufacturingにフラッシュ焼結法を応用するには,少なくとも1mm以下の積層厚さで焼結可能にならなければ実用性は低いと考えられる.また,積層厚さ1mmでの放電の原因は,電極間の距離が縮まったことにより粉体材料の導電性よりも空気の導電性が上回ったことと考えられた.そこで,本年度は粉体材料の成分を変えて導電性を上げ,積層厚さ1mm以下でのフラッシュ焼結実験を行った. 実験に用いた粉体材料YSZは,圧粉体においてイットリア添加量を増やすことでフラッシュ焼結温度を低下させられることが報告されている.そこで,昨年度の実験が3%イットリア添加であったのに対し,本年度は10%添加と大幅に添加量を増やしたYSZ粉体を使用した.また,フラッシュ焼結は大気雰囲気にて700℃-1000℃の間で行った. 実験の結果,イットリア添加量を10%に増やすことで,粉体においてもフラッシュ焼結性が向上することがわかった.すなわち,フラッシュ焼結温度の低下と,臨界電界強さの低下がみられた.しかし,焼結体の緻密度を上げるために温度や電界強さを上げてしまうと,再び放電が起きてしまうことがわかった.これは焼結体が粉体層のため,緻密化の進行により体積が大きく減少することで電極間隔がさらに近づいたことが原因と考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
電界分布などのシミュレーションは既に予定通り終えているが,残念ながら,本研究の肝となる積層厚さ1mm以下での粉体層の局所フラッシュ焼結に未だ成功していない.そのため,焼結体の物性値の評価にまで至っていない.現状において本研究の最重要課題は積層厚さ1mm以下での粉体層の局所フラッシュ焼結技術の確立であり,これに注力している.この技術を確立するために,材料を粉体からシート材への変更の検討と,電源を直流/交流からパルス化への検討を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要課題は積層厚さ1mm以下での局所フラッシュ焼結技術の確立である.現状の問題点は粉体をそのまま扱っていることによる,緻密化の進行に伴う大きな体積変化(40-60%程度)と考えられる.そこで,YSZのグリーンシート材料を一度作製し,ある程度緻密化させたものを出発材料として用いる.これにより,大きな体積変化が20%程度まで抑制されると考えられる.また,現状では電源に直流/交流電源を用いており,電極は常に粉体と接触している必要があるため,体積変化に応じて電極間隔を近づける必要もある.そこで,電源をパルス電源に変更し,瞬間的に緻密化に十分なエネルギーを与えることで,緻密化に合わせて電極間隔を近づける必要性がなくなる.これにより,連続的にフラッシュ焼結が可能となる. 積層厚さ1mm以下での局所フラッシュ焼結技術の確立後,積層させて立体物を造形する.そして,焼結体の物性値を評価する.
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Causes of Carryover |
計画していた焼結実験が予定よりも進行しなかったため,当初装置改造費として計画していた予算が使用できなかった。そのため,残差の助成金は翌年度の装置改造費として使用する。
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