2020 Fiscal Year Research-status Report
新規構造半導体レーザの高温動作メカニズムの解明と光電子融合集積回路への応用
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19K15056
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Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
松本 敦 国立研究開発法人情報通信研究機構, ネットワークシステム研究所ネットワーク基盤研究室, 主任研究員 (30580188)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子ドット / 半導体レーザ / モノリシック集積 / 光集積回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の通信システムでは光集積回路とLSI等を融合集積したICTハードウェアを用いた高速大容量通信技術が必要不可欠となっている。特に昨年度に発生した新型コロナウィルスによる影響で、オンライン会議・授業などの必要性に迫られ、さらなる通信容量の増加とICT環境の大幅な改善が必要な状況となった。そのような観点からも高速大容量通信技術の研究開発の重要性は非常に増していると考えられる。本課題は重要な課題の一つである高温環境下においても性能の劣化が極力抑制された光集積回路の実現を目指している。 これまで、量子構造、特に量子ドット構造を有する半導体光デバイスにイオンを注入し、急速加熱処理を加えることでその組成が変化し、温度特性が極めて向上することを本研究課題申請者は見出してきた(IID-QDI技術:Ion-implantation Induced Disordering Quantum Dot Intermixing)。 R2年度では、微細構造を有する量子ドット半導体レーザの作製を実施した。具体的にはDFB(Distributed Feedback)構造と呼ばれる約200nm程度の周期的な微細構造を有する量子ドット半導体レーザを作製し、その基本的な動作を実証した。R3年度では、この技術とIID-QDI技術の両方を用いた半導体レーザを作製し、高温環境下における特性に関して評価する計画である。また、光集積回路の作製技術に関しても、当初は、量子ドット構造を有するレーザチップと光回路を有するシリコンチップを外部の業者に集積・作製の依頼をすること予定していたが、一部プロセスの内製化が可能となった。異種材料の集積技術を検討し、集積後も各々の特性が劣化することなく良好な特性を得ることが出来た。 これらの実験結果は光関連の国際会議であるOECC2020や、国内の応用物理学会などで研究成果として発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R2年度では、新型コロナウイルスの影響もあり、当初計画していた通りには進捗していないものの、研究計画を修正するなどの手段を取ることにより、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であると考えている。特に R2年度の前半においては、所属研究機関への出勤制限などが実施されたために実験的な研究が非常に制限されたものの、年度後半においては、実験も可能な状況となったことで研究を進めることができた。また年度前半でも出勤制限状況下においては理論検討やシミュレーション、新規デバイスの設計などを実施することにより極力研究の進捗が滞らないように研究の進め方を適宜修正した。 「研究実績の概要」の項目でも記載したが、R2年度では、国内会議を中心として応用物理学会で成果発表を実施しており、また国際会議においてもアジア太平洋領域の国々が主に参加する半導体光デバイスや光通信関係の国際会議OECC2020で発表を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の「現在までの進捗状況」の項目においても記載したが、R2年度において新型コロナウィルスによる影響があり、予定していた実験が十分出来ていない部分もあるため、その点を重点的に実施することを検討している。特に研究計画における【本研究で何をどのように、どこまで明らかにしようとしているのか】のポイント1:IID-QDI 技術を用いたQD-LDの温度特性向上の物理的要因の解明、に関する検討では、外部業者によるTEM観察やEDS分析を計画していたが、これらの計画に影響があったため、今年度、なるべく早いうちに実施することを予定している。ポイント2については、ポイント1と密接に関わっているため、実験と理論検討を元に、引き続き検討を続けていく予定である。ポイント3の微細構造を装荷したQD-LD による温度無依存化に関して、微細構造であるDFB構造を持つQD-LDの作製が上手く出来、その基本的な特性を示すことができた。今年度はこの構造をIID-QDIを用いた素子に適用し、温度無依存化に関する実験を実施する。ポイント4の検討に関して、当初の計画では外部の業者に集積プロセスを委託し、デバイスを作製することを計画していたが、昨年度までに一部プロセスを内製化することに成功した。今年度はその点も踏まえ、かつ、上記のポイント1から3の実験結果を元に集積デバイスを作製し、その評価をする予定である。
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Causes of Carryover |
R2年度の計画では、作製した光デバイスの断面の分析をするための費用や、新たなサンプル作製のための費用などを予定していたものの、新型コロナウィルスの影響もあり、計画を修正しながら研究を進めた。そのため、計画していた分析や新たな集積デバイス作製にかかる費用をR3年度に繰り越して実施することとした。
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Research Products
(2 results)