2020 Fiscal Year Research-status Report
イオンバランスに基づく脱塩後コンクリート構造物の鉄筋発錆限界評価と長寿命化
Project/Area Number |
19K15061
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
中山 一秀 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (10835408)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脱塩工法 / 塩害 / 発錆限界塩化物イオン濃度 / 鉄筋防食効果 / 表面保護工法 / イオン分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、脱塩工法を適用した鉄筋コンクリート中の鉄筋防食効果の定量的評価と鉄筋防食効果持続性の向上に向けて、以下の2つの観点から検討を実施した。 ①脱塩前の鉄筋コンクリートの劣化状態が補修効果に及ぼす影響評価 今年度は,脱塩前の鉄筋腐食程度を変化させた試験体に対して,脱塩処理を実施し,脱塩効果およびその後の鉄筋防食効果について検討を行った。鉄筋腐食の程度は,軽微な腐食,内部腐食ひび割れ発生程度,コンクリート表面に0.2mm程度の腐食ひび割れが発生した程度の3段階とした。また,コンクリート表面まで腐食ひび割れが達した試験体については,ひび割れ注入材による前処理の有無が補修効果に及ぼす影響についても検討した。この結果,内部腐食ひび割れ程度の腐食レベルであれば,健全鉄筋試験体と同程度の脱塩効果が得らえることが分かった。一方で,コンクリート表面まで腐食ひび割れが達した場合は,ひび割れ注入材によってひび割れを閉塞することで,目標とする脱塩効果を得ることができた。また,脱塩処理に伴い腐食生成物の組成が変化している可能性が示唆された。 ②[Cl-]/[OH-]モル比と電気化学的手法を用いた腐食発生限界の評価 内在塩を含む鉄筋コンクリート試験体に対して脱塩処理を実施した後に,外部から塩水を浸透させながら電気化学的モニタリングを実施し,腐食発生時点の検出を試みている。一方で,コンクリートを用いた試験では,腐食発生までに長時間を要するため,促進劣化試験として,脱塩処理後のコンクリート中の鉄筋近傍の状況を模擬したかぶり10mmの鉄筋モルタル試験体並びに細孔溶液を模擬した水溶液中に浸漬した鉄筋試験体を用いた試験を並行して実施した。現時点までの結果からは,脱塩工法適用後の腐食発生限界[Cl-]/[OH-]モル比は普通コンクリートと比較して大きくなる可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脱塩工法の補修効果(脱塩効果,鉄筋防食効果)に関して,脱塩前の腐食劣化程度が及ぼす影響を定量的に評価し,目標とする脱塩効果が得られる適用時期を提案した。また,脱塩工法適用後のコンクリート中における鉄筋の発錆限界について,評価試験システムの構築は完了しており,おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
脱塩工法を適用したコンクリート中の鉄筋発錆限界[Cl-]/[OH-]モル比を評価するために構築した試験システムを用いて、引き続き検討を実施する。また、脱塩工法の鉄筋防食効果持続性を向上させるための方策として、脱塩工法適用後に表面処理工法を併用した場合の鉄筋防食効果持続性について検討を進める。最終的には、試験より得られた発錆限界[Cl-]/[OH-]モル比を閾値とし、脱塩工法適用後の鉄筋防食効果の持続性について数値解析を用いて定量的に推定する手法を提案したい。
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