2023 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアの港湾諸都市における建築コンバージョンのデザイン手法と都市文化の継承
Project/Area Number |
19K15190
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
角野 渉 東京都立大学, 都市環境科学研究科, 客員研究員 (30708128)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンバージョン / デザイン手法 / 港湾都市 / 都市文化 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は中国、韓国、台湾の3カ国の港湾都市を対象とし、コンバージョン建築を都市文化の継承方法の一つとして捉え、都市の経済や発展史などからコンバージョン建築の成立背景を整理し、事例の建築意匠の分析から、都市文化の継承手法としての総合的な知見を獲得することを目的とする。 本年度は最終年度で、国内外の実地調査を実施することとした。事前の文献調査により、その都市形成史や産業、都市構造の分析を通じて研究での重要度が増すこととなった韓国の釜山、台湾の台南、国内の長崎及び富山に対象を絞って実地調査を実施することとした。 釜山調査では、日本統治時代の良質な建物がコンバージョンされて再利用されており、行政による博物館への転用や、民間による商業複合施設への転用など、官民いずれにおいても観光文化に活かされている様子を確認できた。それらの建物は近代黎明期の時代に特有の特徴を示しており、現代建築や土着的な民家などとの対比的な様相を示していた。台南調査では、台湾最古の都市として中世のオランダ統治下の文化や清国、日本統治下の文化など、多元的な文化背景が積層する都市構造を有しており、その中において行政主導による文化拠点や民間主導による観光拠点などへのコンバージョン建築事例が見られた。事例の多くは日本統治下の建物のコンバージョンが多かったが、一部、日本統治前の西洋植民地建築のものも見られた。 初年度の上海研究の成果も含め、これらは東インド会社を中心に西洋列強が東進した拠点都市であり、その後の日本植民地も経験した都市であるが、それは西洋近代建築の系譜と日本近代建築の系譜が重なった場所であるといえる。その複層的な文化的背景の上に、各都市独特の歴史的意匠が生まれており、その活かし方が都市の産業振興や文化の継承と関係づいていることが、対象都市のコンバージョン建築事例のデザイン手法の分析を通じて明らかとなった。
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