2019 Fiscal Year Research-status Report
凹凸形状クラックアレスターを有する接着接合継手の接着はがれ進展挙動予測
Project/Area Number |
19K15215
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
安岡 哲夫 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 研究開発員 (80746735)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | シングルラップ継手 / 接着接合 / Cohesive要素 / き裂進展解析 / クラックアレスター |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,有限要素解析に必要な接着剤の物性値を取得するとともに,シングルラップ接着接合継手のき裂進展についてトライアル解析を行った. 接着剤はスリーエム社の航空機構造用フィルム接着剤であるAF163-2M(厚さ0.24mm)を使用した.これを5層積層して硬化させた接着剤単体積層板を製造し,ここからダンベル型の試験片を切り出した.万能材料試験機を用いて,ASTM D638に準拠した引張試験を実施し,弾性係数,ポアソン比,耐力,破断強度,真応力-真ひずみ線図等,接着剤の機械特性値を得た. シングルラップ接着接合継手のトライアル解析は,市販のFEMソフトウェア,ABAQUSを用いて行った.まず,チタン合金(Ti-6Al-4V,厚さ3mm)の板同士を接着剤で接合した一般的なシングルラップ継手のモデル(ベースモデル)を考え,ABAQUSに実装されているCohesive Zone Modelによりき裂進展解析を試行した.物性値は,接着剤は試験で得たものを,チタン合金は文献値を用いた.ただし接着剤の破壊靭性値は未取得のため文献値を適用した.解析は2次元モデルとし,チタン合金は平面ひずみ要素,接着剤層はCohesive要素とした.継手モデルの片端を固定し,もう片端に強制変位を付与して仮想的な引張試験を行った.結果,接着剤層には垂直応力とせん断応力の両方が生じること,ある変位に達すると反力の低下(き裂生成によるエネルギー開放)が生じることを確認し,シングルラップ継手の破壊挙動を再現した.続いて接着剤層内に矩形のチタン材突起が存在する継手モデル(突起モデル)を作成し,同じように引張解析を実施した.結果,ベースモデルと比べると,突起部周辺で応力場に乱れが生じるものの全体の応力伝達に影響はなく,単純強制変位による荷重条件下ではクラックアレスターとしての効果はないことが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では初年度にき裂進展シミュレーションモデルの構築までを考えていた.しかし想定以上に解析の非線形性(材料非線形,幾何学的非線形,境界非線形)が大きくFEMの収束性が悪かったため,き裂の方向変化まで組み入れたモデルの構築は容易ではなく,初年度内に完成させることができなかった.そのため当初の目標は未達となった. また,初年度は物性値取得試験の完了を予定していた.機械特性試験については実施したものの,これに費用を要したため,破壊靭性値用の試験片を製作できず,破壊靭性値は得ることができなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,これまでに作成したベースモデルをもとに,き裂進展方向の変化を再現できるシミュレーションモデルの構築を行う.収束性の改善のため,Cohesive要素は接着剤層すべてに適用するのではなく,き裂の影響を受ける範囲のみにとどめる.加えて,どのような荷重条件であればクラックアレスターとして機能するのか,またクラックアレスターとして効果的な突起形状は何かについて検討を進める.さらに,破壊靭性値を取得するとともに,破壊靭性値取得試験(DCB試験/ENF試験)の挙動をCohesive Zone Modelにより解析的に再現し,物性値と解析方法の妥当性を確認する.
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