2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of MPB free piezoelectric materials by reversible ferroelastic domain switching
Project/Area Number |
19K15288
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
清水 荘雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 独立研究者 (60707587)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 圧電性 / ドメイン構造 / 薄膜 / 歪制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目にあたる2020年度は、(1)チタン酸ジルコニウム酸鉛(PZT)薄膜におけるドメイン構造の形成過程、(2)新規非鉛強誘電体における巨大圧電性発現について研究を行った。 本研究では、これまで圧電体探索の基本となっていたモルフォトロピック相境界をはじめとする相境界に依拠せず、強誘電体の異方性によって導入されるドメイン構造の応答を用いた巨大電気機械応答の実現を目指している。 (1) PZT薄膜におけるドメイン構造の形成過程については、そのドメイン構造がどのように決定されるかについて温度依存性から詳細な検討を行った。これまで、ドメイン構造は主として成長温度からの冷却過程において、強誘電相に相転移にするときに決まると考えられてきた。しかしながら実際には、基板上に作製した薄膜においては、強誘電相においてドメイン構造が変化する現象がみいだされる。この現象は、強誘電相においても、基板との熱膨張率の差によって歪が導入され、この歪を解消するためであると考えられる。実験としては、KTaO3基板上のPZT薄膜, GdScO3上のPbTiO3薄膜でこのような現象が観測された。興味深いことに、歪の正負やPZT膜の組成によらず、ほぼ300℃以上でのみこのようなドメイン構造転移が観測されることが分かった。強誘電相での熱歪は、前年度に見出された電界誘起ドメイン導入と巨大圧電応答でも重要な因子であり、その導入過程については今後も検討していく予定である。 (2) 新規非鉛強誘電体における巨大圧電性発現については、チタン酸ビスマスナトリウム-チタン酸バリウムについて研究を行ったが、SrTiO3基板上に作成した膜においてはPZT膜のような巨大な圧電性は確認できていない。一方で、その高い相転移温度(~200℃)を利用して、PTCRサーミスタ応用の可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PZTにおける、ドメイン構造相転移についての検討によって、ドメイン構造転移について熱歪が重要な役割を果たしていることが明らかになった。これは、微細ドメイン構造による巨大圧電性発現についての重要な知見であるといえる。一方、非鉛強誘電体における圧電性については進捗が少し滞っているが、試料作製等には成功しつつあり、新たな応用展開の可能性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、、チタン酸ビスマスナトリウム-チタン酸バリウム固溶体についての検討を引き続き進めていくとともに、この固溶体系において組成検討を行うことによって、本研究で提案するドメインスイッチングによる圧電性増強の長所・短所についてMPBコンセプトとの比較を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の蔓延等によって、学会等の開催がオンライン開催となるなどして、旅費支出が減少したため。
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