2019 Fiscal Year Research-status Report
高速AFM/光ピンセット複合装置を用いた生体分子の機能動態の解明
Project/Area Number |
19K15409
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
梅田 健一 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 特任助教 (60746915)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 高速AFM / 光ピンセット / DNA / 生体機能動態 / 外力印加 / アンフォールディング / リフォールディング |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、バイオ顕微鏡技術の一つである高速原子間力顕微鏡(AFM)が急速に進展しており、最速で30フレーム/秒の走査速度で生体分子の機能動態を可視化することが可能となった。本研究では、探針走査型の高速AFMに光ピンセット(OT)を組み合わせた複合装置の開発を行い、外力印加中にあるDNAやタンパク質の機能動態を可視化することを目的として行っている。 ・研究室内にはIgorベースで開発された高速AFM用の制御プログラムおよびC#ベースで開発された解析ソフトが存在するが、高速AFMとOTに同時制御を容易にするために制御・解析プログラムを新たにVB.NETを用いて開発を行った。制御ソフトには、Bluetooth接続したジョイパッドでの制御、AFMとOTの同期駆動、クリックムーブ、高ピクセルモード、探針軌跡の表示、任意アスペクト比など様々な機能を備わっている。解析ソフトには、閾値Flatten、任意アスペクト比、ズームモードなどの機能が備わっている。 ・更に、OTで得られた実験データを解析するために、相互相関関数をもちいてマイクロ粒子の軌跡をトラッキングし、レーザーから変位をモニタリングすることで、AFM測定時に生体分子に印加されたフォースを測定可能なプログラムの開発も行った。 ・更に高速AFM/OT測定に最適なヘアピンをもったDNAアッセイの作製を行った。AFM測定の都合上、ヘアピンが一つではなく複数箇所存在しないと実験が困難であることから、プラスミドDNAを元にしてコンカテマー技術により開発を行った。 ・こうして得られた実験セットアップを用いて、DNAの二重螺旋構造のアンフォールディング・リフォールディングの動態可視化や、二重螺旋解離に伴う一本鎖生成過程の可視化などに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DNAの二重螺旋構造のアンフォールディング・リフォールディングの動態可視化や、二重螺旋解離に伴う一本鎖生成過程の可視化などに成功したことは予想以上の進展であった。DNAリン酸バンクボーンの共有結合を破断するには100 pN以上のフォースが必要であり、このような現象が観られたのは予想外の結果であった。更に、表面上に吸着した状態では、溶液中において浮遊状態にあるのと比べて拡散速度が桁違いに遅くなるが、それにも拘わらず、解離・破断する様子だけでなく、二重螺旋構造が修復する様子も可視化することに成功したことも予想外の進展であった。この結果は、今後、タンパク質など他の生体分子に応用する上で重要な知見を与えてくれた。
|
Strategy for Future Research Activity |
コンカテマー技術により開発したヘアピンDNAのダイナミクスの可視化にも成功しつつあり、更に高分解能で実験データを得る必要がある。更に、ヌクレオソームやG-quadruplexなどの他のDNA高次構造体を埋め込んだアッセイの開発を行い、これらのダイナミクス可視化も試みる。また、こうした一本鎖DNAに特異的な吸着するヘリケース、ポリメラーゼ、蛍光分子などを溶液に溶解し、フォースの印加により脱吸着する様子も可視化したい。システインを埋め込んだプロテインにチオール修飾したDNAを結合し、ダイナミクス可視化を試みる。APTESをマイカ上に薄く塗布し、グルタルアルデヒドを修飾した上でDIG抗体を結合し、Anti-DIG抗原修飾したDNAを結合し、DIG抗体のダイナミクスの可視化も可能か試みる。
|