2020 Fiscal Year Annual Research Report
Syntheses and Applications of High-ordered Iptycene Derivatives
Project/Area Number |
19K15546
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
鄭 善牙 関西学院大学, 理工学部, 助教 (10781643)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | イプチセン / イソベンゾフラン / イソベンゾヘテロール / ポリアセン / 一重項分裂 |
Outline of Annual Research Achievements |
イプチセンはビシクロ[2.2.2]オクタン環骨格に芳香環が三方向に縮環したプロペラ型π共役系化合物であり、独特な構造に由来した特異的な電子構造や動的挙動を示す。本研究では、キノイド型構造の高反応性分子であるイソベンゾフランを基本ユニットとするイソベンゾフラントリマーを合成し、高次イプチセンの合成や機能性分子への展開を目指した。以前、イソベンゾフラントリマーを合成ブロックとする3Dペンタセンの合成に成功し、一重項分裂を観測することができた。次に、特徴的な物性を有するジフェニルイソベンゾフランを三方向に連結させたプロペラ型イソベンゾフランの合成を行い、基礎物性を調べた。すなわち、トリプチセンを臭素化して得られたヘキサブロモトリプチセンを出発物質として用いて、トリスアラインを発生し、三重環化付反応により三重付加体を得た。この環化付加反応は逐次的に行うことができるため、一重付加体や二重付加体も選択的に合成できた。次に、三重付加体にテトラジンを用いて、プロペラ型イソベンゾフランへ変換し、不活性ガス雰囲気化でカラムクロマトフラフィー精製を行うことで単離に成功した。さらに、X線結晶構造解析により、その構造的な特徴が明らかになった。続き、プロペラ型イソベンゾフランに対し、ローソン試薬を作用させ、プロペラ型イソベンゾチオフェンへの変換にも成功した。合成したプロペラ型イソベンゾヘテロールの紫外可視吸収スペクトルを測定したところ、各モノマー間の空間的相互作用に起因すると考えられるピークが観測され、分子内一重項分裂などへの応用が期待できる。また、イソベンゾチオフェンの場合、イソベンゾフランに比べ優れた安定性とともに大きいストークシフト、高い螢光量子収率を示すことから新規蛍光材料としての応用も期待できる。以上、新規高次イプチセン類の合成に成功し、物性を明らかにした。
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