2019 Fiscal Year Research-status Report
酸素運搬タンパク質様酵素が担うキノロン骨格形成の詳細な分子機構解明
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19K15757
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
岸本 真治 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (40814330)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 酵素反応 / 基質選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
シクロペナーゼはヘモシアニンという酸素運搬タンパク質に類似したアミノ酸配列を有していながら基質化合物の骨格変換を担う二次代謝酵素である。シクロペナーゼはなぜ類似タンパク質と全く異なる機能を有するようになったのか。その原因を解明するのが本研究の目的である。 本年度は我々が報告したシクロペナーゼAsqIおよびその不活性型変異体を用いて基質や競合阻害剤との共結晶化を試みた。様々な結晶が得られたものの酵素中に基質は見られず、ヘムも位置が固定されていないためか結晶中の場所を特定することができなかった。一方、ヘムの含量を減らした変異AsqIを調整して速度論的解析を行うと結合定数には大きな変化がないが触媒回転数の大幅な低下が見られた。このことからヘムがシクロペナーゼと基質の結合には影響していないことが示唆された。 データベースから相同性検索によって見出したAsqIのホモログであるnovoAsqI、lentAsqI、PenLの遺伝子をそれぞれAspergillus novofumigatus、Aspergillus lentulus、Penicillium thymicollaからクローニングし、大腸菌を用いてそれらのリコンビナント酵素を取得した。得られた酵素を用いて酵素反応を行ったところ、novoAsqI、lentAsqIがシクロペニン類の化合物すべてを基質とし、PenLが4-メトキシシクロペニンのみを基質とすることを確認できた。この結果はシクロペナーゼの基質選択性に関する知見を与えるものである。しかし、novoAsqI、lentAsqI、PenLはいずれもヘムの含量が少なく、精製しても分解で生じたと推定されるバンドがSDS-PAGEにて検出されるほど安定性が悪かったことからヘムの機能推定には至っていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験は一通り実施できたが基質との共結晶が得られていない、他のシクロペナーゼの安定性が悪いなど当初の目論見とは外れた結果となりヘムの機能に関する決定的な情報がまだ得られていない。しかし、ヘム含量の少ない変異AsqIの速度論的解析からヘムが基質の結合に関与していないことがわかったことから研究は前進しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨今のCOVID-19の影響でタンパク質にX線を照射できる施設の再稼働の予定が不明瞭であるため、令和2年度はX線の照射を行えない可能性があることも考慮し計画をやや変更した。 1.これまでに合成した化合物の阻害能の有無から阻害剤に必要な構造がある程度判明しているので新たに阻害剤を設計し合成する。その後、AqIの阻害活性の評価を行い阻害活性が高いものはAsqIとの共結晶化を試みる。 2.これまでに調製したAsqIのホモログはいずれも酵素全体での相同性が高いもののヘム結合部位周辺の保存度はあまり高くなかった。これが原因でヘム含有率が低下している可能性があるため、AsqIとヘム結合部位の相同性が高いシクロペナーゼを取得し、その機能を調べる。 3.ヘムを含有していない状態での安定性が悪い問題に対しては、安定性を向上させる変異を探索することで解決を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度にも使用できることから必要以上の物品の購入を避けた結果、残るに至っている。物品の購入費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)