2020 Fiscal Year Research-status Report
リンゴの萌芽制御における冬の“長さ”の認識に関わる脂質シグナルの解明
Project/Area Number |
19K15814
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 隆徳 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 助教 (20753479)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自発休眠 / エピジェネティクス / マルチオミクス解析 / 細胞培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に採取した萌芽能の喪失が生じる時期(11月から12月)のリンゴ‘ふじ’の芽を用いて、全転写産物量の推移をRNA-sequenceにて解析した。さらにRNA-sequence解析の結果と昨年度に実施した細胞メモリー(クロマチン構造の変化)の結果を統合するようなマルチオミクス解析を行った。その結果、脂質代謝関連遺伝子のなかでも特にジャスモン酸と呼ばれる植物ホルモンの生合成が抑制されていることを特定した。さらにマルチオミクス解析を行ったことで、短期的な温度ストレス応答を排除し、『一定期間の冬の寒さ(=細胞メモリー)』に応答する遺伝子群を明確にすることができた。特にジャスモン酸を含めた脂質代謝に加え、低温・低酸素・アブシシン酸および糖代謝の5つの因子の相互作用によって萌芽制御に関与していることを明確にすることができた。またこれらの因子を制御する遺伝子群のプロモーター領域においても、昨年度の結果と同様にクロマチン構造が変化することで、MADS-boxタンパクの結合領域が11月から12月にかけて表出していることを確認した。さらにリンゴ‘ふじ’の芽から確立した培養細胞に対して、前述の5つの因子が変化するように培養環境および培地条件を変更したところ、細胞分裂の低下と関連する遺伝子の発現量の増減がみられた。すなわち培養細胞を休眠様状態に誘導することができた。その成果については現在、次年度中の出版を目指して、国際誌に論文を投稿する準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度と今年度のデータを統合したマルチオミクス解析の結果を利用することで、休眠様現象を培養細胞で誘導できたことや、さらに脂質シグナルの起点となりうるMADS-boxタンパクの候補を3つまで絞ることができたことから、おおむね順調に研究が進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を通じた解析を通じて、現在のところ脂質シグナルの起点となりうるMADS-boxタンパクの候補を3つまで絞ることができた。次年度は脂質シグナルの起点となりうるMADS-boxタンパクを特定する予定である。
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