2021 Fiscal Year Annual Research Report
多元的解析手法による園芸植物のCa欠乏症発生要因の解明
Project/Area Number |
19K15830
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
黒沼 尊紀 千葉大学, 環境健康フィールド科学センター, 助教 (10808596)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 共分散構造分析 / Ca欠乏症 / チップバーン / トルコギキョウ / 成長解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
園芸植物のCa欠乏症は「Ca吸収能」、「Ca移動能」、「成長速度」など、いくつかの要素が複合的に関与し発生するが、これらの要素を数値化し、多元的に解析した事例はみられない。そこで本研究では、経営学や心理学分野で利用されている「共分散構造分析」を用いて、トルコギキョウのチップバーンの発生要因を網羅的に解析した。 この結果、チップバーン被害度が高いトルコギキョウは、「Ca吸収能」の増加とともに、根への「Ca移動能」が増加するが、新葉への「Ca移動能」は増加しないことが明らかとなった。加えて、トルコギキョウのCa吸収・移動について、培養液中のKやMgとの拮抗作用は確認されず、一部の品種では培養液Mgの増加により、チップバーン被害度が減少することが示された。これは、葉のMg増加による「Ca移動能」の上昇によるものだと考えられた。 以上の結果から、トルコギキョウにおけるチップバーン発生の主要因は、根への過剰なCa蓄積による「Ca移動能」の低下であることが示された。さらに、この根へのCa蓄積の原因遺伝子を探索するため、トランスクリプトーム解析を行った結果、CAX5などの候補遺伝子が抽出された。 園芸生産分野において、生理障害の発生や収量は、いくつもの要因が複合的に関与することで決定される。本研究により、Ca欠乏症の発生をモデルとした「共分散構造分析」の有効性が示された。今後は、園芸生産分野における本手法のさらなる活用に加え、ゲノムレベルでのトルコギキョウのチップバーン発生メカニズムの解明が期待される。
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Research Products
(3 results)