2021 Fiscal Year Research-status Report
地域政策が森林所有者の意思決定を誘導する効果の定量化
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19K15878
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山田 祐亮 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究員 (40778346)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | AHP法 / 伐採傾向 / 公益的機能 / 機能間トレードオフ / 地域政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に研究対象地である市の林業事業体に対して、皆伐地の選定に関する聞き取り調査を行った。聞き取り調査では所有者が在村している林地において、搬出距離、傾斜、林分材積、単木材積をもとに皆伐地選定を判断するとのことだった。本年度では、聞き取り調査の結果からそれぞれの因子がどの程度影響するかをモデル化し、AHP法により、地形図や森林計画図と組み合わせて皆伐地選定時の優先度を地図化した。また、作成した優先度マップと、衛星写真を用いて分類した皆伐箇所の分布と重ね合わせることで、それらの関係性を分析した。その結果、皆伐された林地では、皆伐されなった林地よりも優先度の値は高くなる傾向にあり、AHPスコアと皆伐地には相関関係があった。しかし、AHPスコアが小さい林地でも皆伐が行われており、林業事業体が皆伐地を選定する際に他の要因が影響しているか、林業事業体自身が選定の基準を客観的に評価できていない可能性がある。 また、ベイズ、深層学習等の手法を用いた伐採傾向の分析を行うため、分析に用いるハードウェアの準備と、データの整理、分析プログラムの開発を行った。 計画になかった成果として、九州の隣接する3市において、衛星写真を用いて分類した皆伐箇所の分布と、表層崩壊防止機能、表土保全機能、森林アメニティ機能の評価マップを重ね合わせ、各市の林業の傾向と公益的機能の関係性について分析した。その結果、他県の林業事業体による皆伐が多い市では、公益的機能を保全すべき林地でも皆伐面積の比率が比較的高かった。一方で、森林組合が中心となって循環的な林業を進めている市では、公益的機能を保全すべき林地における皆伐面積の比率は低かった。この結果は、木材生産と公益的機能を将来にわたって調和させるためには、地域の傾向を踏まえた政策の立案が重要であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究を進め、来年度の解析に向けた準備を整えた。さらに計画外であった成果も出すことができた。最終年度である次年度に向け、解析を滞りなく進める準備を整えられていることから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの成果で、林地の条件ごとの伐採されやすさは、地域ごとで異なることが示された。効果的な地域政策を策定するためには、林地の条件と伐採されやすさの関係を、より精緻に推算する必要がある。そこで次年度は、機械学習の手法を用い統計的因果推論により伐採傾向を明らかにする。その際、ベイズや深層学習の手法を適用・比較し、より適した手法を選択する。なお、今年度整備したハードウェア環境や、プログラムコードを利用する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で、参加した国際学会や、第133回人森林学会大会がオンライン開催となり、その分の旅費が次年度使用額となった。次年度使用額に関しては、翌年度に請求した助成金と合わせて、調査のための出張費や文献費、成果発表のための英文校閲費や学会参加費に使用する。
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