2020 Fiscal Year Research-status Report
The role of copepods as primary producers of polyunsaturated fatty acids
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19K15908
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Research Institution | Tokyo University of Marine Science and Technology |
Principal Investigator |
壁谷 尚樹 東京海洋大学, 学術研究院, 助教 (90758731)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 多価不飽和脂肪酸 / カイアシ / DHA / EPA / 不飽和化酵素 / 鎖長延長酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、Harpacticoida目に属するTigriopus californicus、Platychelipus littoralisおよび、Cyclopoida目に属するカイアシ類の一種を主な対象として実験を進めた。前年までの各種多価不飽和脂肪酸(PUFA)生合成酵素遺伝子の単離およびその機能解析をさらに発展させ、特にT. californicusに関しては、様々なオメガ6系PUFAを対応するオメガ3系PUFAへと転換可能であることを示した。これまでの結果より、本種は網目状のPUFA生合成経路を有していることが明らかとなり、脊椎動物とは全く異なる経路によるエイコサペンタエン酸(EPA)・ドコサヘキサエン酸(DHA)の生合成が可能であることが強く示唆された。なお、以上の結果をまとめ日本水産学会にて口頭発表し、原著論文をOpen Biology誌に掲載した。また、EPA・DHAを一切含まないなど様々なPUFA組成を示す餌料を用いた給餌試験を実施し、飼育後の脂肪酸組成の解析を行なった。前年度までにT. californicusにおいて餌量の脂肪酸組成に関わらず一定のEPA・DHAを保有し続けることがすでに明らかとなっていたが、本年度はCyclopoida目に属する種においても同様に、EPA・DHAを全く含まない餌量においても常に高いEPA・DHA含量を保ち続けることが示された。特に、Cyclopoida目に属する本種はT. californicusに比べて10倍以上も高い脂質含量を示し、絶対量としてのDHA含量が非常に高い。すでに本種から各種のPUFA生合成酵素遺伝子の単離および機能解析を進めており、今後は安定同位体で標識した脂肪酸などを用いて本種含む対象種が実際にどれだけのPUFA生産能力を有するのか解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、Covid-19の流行に伴い出張等が難しくなったことや、非常事態宣言発出に伴い職員の出勤、実験をともに進めている学生の登校が一時的に禁止になったことなどが影響し、予定通りに実験を進めることが困難であった。特に、安定同位体を用いた実験では、カイアシに安定同位体で標識した脂肪酸を取り込ませるために利用するリポソームの調整にやや難航し、その後感染第三波に伴う二度目の緊急事態宣言が発出されるなど条件検討などにまとまった時間を使うことが厳しい状況が続いた。一方で、リポソームの調整については研究代表者と継続して共同研究を行なっているスペイン、トレ・デ・ラ・サルの養殖研究所のOscar Monroig氏、また安定同位体を用いた分析技術についてはPlatychelipus littoralisを用いた実験で共同研究を進めているベルギー、ゲント大学のMarleen De Troch氏に協力をお願いし、現在は円滑に実験が進められる状況となっている。そのため今後は、これまでの研究により絞り込んだ完全なPUFA生合成経路を有する種を対象として、安定同位体標識脂肪酸を用いて、実際に当該種がどの程度PUFAを生産可能なのかを明らかにする研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、Tigriopus californicus、Platychelipus littoralisといったHarpacticoida目カイアシ、およびCyclopoida目カイアシを用いて、実際の生体内でどの程度のPUFA転換が起きるのかを明らかにする。特に、これらカイアシ類は脊椎動物が保持しない単価の不飽和脂肪酸(MUFA)からPUFAを生合成するための遺伝子を有していることが本研究成果により示されているため、13Cなどの安定同位体で標識したMUFAやあるいは飽和脂肪酸を当該カイアシに取り込ませ、体内での各種PUFAへの転換をGC-MSを用いて解析する。また、これらカイアシ類は様々な環境に適応することが可能であることが知られている。そこで、飼育実験として水温や塩濃度、溶存酸素量などを変化させ環境ストレスを与えたときに、当該種のPUFA転換能がどのように変化するかも解析予定である。
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Research Products
(11 results)