2020 Fiscal Year Research-status Report
魚類NK細胞が担う細胞性免疫機構解明と細胞性免疫を誘導する免疫賦活剤の開発
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19K15914
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
松浦 雄太 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 水研機構(南勢), 任期付研究員 (40823894)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナチュラルキラー細胞 / NK細胞 / 細胞性免疫 / 細胞内寄生細菌 / ギンブナ |
Outline of Annual Research Achievements |
魚類養殖において、ブリ類のノカルジア症など細胞内に侵入し増殖する細胞内寄生細菌による感染症が大きな問題となっている。これら病原体に対する感染防御に重要な役割を担うリンパ球として、ナチュラルキラー(NK)細胞が知られているが、魚類におけるNK細胞の特性や機能は不明である。 2020年度の研究では、新たに魚類NK細胞マーカーの遺伝子単離に挑戦し、引き続きNK細胞を用いた研究を進めるための基盤的技術の確立を目指した。見出した魚類NK細胞マーカー遺伝子をマクロファージ不含ミエロイド集団より単離し、本遺伝子がSRCR(scavenger receptor cysteine-rich)ファミリーに属する膜タンパク質をコードすることが判明した。本タンパク質をコムギ胚芽無細胞タンパク質合成系により合成した結果、同時に添加したリポソーム上にプロテオリポソームとして合成された。すなわち、本タンパク質は脂質膜である細胞膜に発現する分子であることが示唆されるため、本分子に対して作製した抗体はNK細胞のマーカーとして有用であると考えられる。現在、合成したプロテオリポソームをマウスに免疫し、本分子に対する抗体を作製中である。 最後に、細胞性免疫を誘導する免疫賦活剤として、乳酸菌の一種であるEnterococcus faecalisの効果を検証した。本菌の加熱死菌をギンブナに腹腔内接種した結果、NK細胞を含む細胞集団の細胞数が顕著に増加し、その効果は少なくとも1週間以上持続することが判明した。本死菌には、細胞内寄生細菌Edwardsiella tardaに対する抗病性向上効果も確認されたため、現在、抗病性向上効果へのNK細胞の関与について詳細な解析を実施中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の研究で見出したNK細胞マーカー候補遺伝子は、その発現量が極めて少なく、マーカーとしての使用が困難であったため、2020年度の研究では、新たにNK細胞マーカーの探索を実施した。その結果、無事に有望なNK細胞マーカー遺伝子の単離に成功し、現在本マーカーに対する抗体作製のための準備も完了している。2020年度は、新型コロナウイルスの蔓延による県外への移動自粛により、セルソーターなど県外の外部機関に設置されている研究機器を使用することが不可能であったため、計画にあったNK細胞の解析を実施することができなかった。そのため急遽、2021年度の計画にあった「細胞性免疫を誘導する免疫賦活剤の探索」を実施し、Enterococcus faecalisにその効果があることを見出した。 以上より、本課題は概ね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在作製中のNK細胞マーカーに対する抗体の特性解析を行い、NK細胞を用いたアッセイに使用可能か否かについて検証を行う予定である。また、新型コロナウイルスの蔓延に伴う社会情勢を考慮しながら、順次、県外の外部機関に設置されている研究機器を使用したNK細胞の役割や機能の解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
実施予定だった実験を翌年度に繰り越したため。試薬類購入に使用する予定。
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