2020 Fiscal Year Research-status Report
わが国牛肉の需要・市場構造と関税削減影響に関する計量経済学的研究
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19K15920
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
高橋 昂也 九州大学, 農学研究院, 助教 (70757955)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 牛マルキン / 牛肉需要構造 / 製品差別化 / 関税削減影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
第1の小課題「国産牛肉と輸入牛肉の差別化」について、先行研究においてそれぞれ1つの品目に集計されていた乳用牛肉および輸入牛肉を、前者は乳用去勢牛肉および乳用めす牛肉に、後者は米国産および豪州産の各部位ならびに輸入冷凍牛肉にそれぞれ分類した上で、わが国牛肉需要構造の計量経済分析を行った。その上で、牛マルキンの関税削減影響緩和効果についてシミュレーション分析を行った。主な分析結果は、以下のとおりである。 第1に、輸入牛肉7品目の価格がすべて同時に1%低下したとき、乳用去勢牛肉の需要量は0.989%減少する。 第2に、牛マルキンは、乳用去勢牛の生産に対する関税削減影響を十分に緩和することはできず、生産者価格は8.9~14.6%低下、生産頭数は2.0~8.4%減少、生産額は16.2~16.6%減少する。このとき、生産者価格は物財費を下回る。また、乳用去勢牛に対する牛マルキンの国負担額は58.3億円から193.3~302.5億円まで増加する。 第3に、牛マルキンにおける生産者の負担金を無くし、国が標準的販売価格と標準的生産費の差額の9割を全額負担した場合、乳用去勢牛に対する関税削減影響は大きく緩和され、生産者価格が物財費を若干下回るものの、生産者価格、生産頭数および生産額の落ち込みはすべて5%未満に留まる。ただし、その一方で、乳用去勢牛に対する牛マルキンの国負担額は402.2~436.0億円まで増加する。 以上から、現行の状況が続いた場合、関税削減後の乳用去勢牛の生産においては、生産者価格が物財費を下回る状況となるため、生産者サイドは何らかの構造変化を求められると考えられる。したがって、わが国政府は、牛マルキンの制度変更も視野に入れながら、関税削減後の状況を注視していく必要があると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1の小課題を予定どおり達成することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は、残りの小課題について研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、学会大会がオンライン開催になるなどの変更があり、旅費等の使用が不要になったため。
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Research Products
(6 results)