2020 Fiscal Year Research-status Report
野生動物の集団遺伝構造解析からアプローチする感染症生態学についての研究
Project/Area Number |
19K15984
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
兼子 千穂 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 助教 (20811706)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 野生動物 / 生態 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症の新興・再興を制御するためには、野生動物を含めた生態系内の感染症の動態を捉えることが必要である。特に山間部から家畜やヒトの生活圏まで広く分布する中型野生動物の分布や移動は地域の感染症伝播に影響を及ぼしている可能性がある。本研究では、中型野生動物が生態系内で感染症伝播に果たす役割を明らかにし、地域の感染症についてのリスク評価を行うことを目的とした。 昨年度に引き続き、宮崎市および周辺自治体において、野生動物のロードキル検体および有害捕獲個体を収集した。今年度は、昨年度収集した99検体に加え、アナグマ19検体(ロードキル4検体、有害捕獲15検体)、タヌキ11検体(ロードキル3検体、有害捕獲8検体)を収集し、組織材料を採取した。 野生動物の感染症保有状況調査に関しては、収集した野生動物の血清(87検体)を用いた重症熱性血小板減少症候群ウイルスを対象とした検査を行った。その結果について、第163回 日本獣医学会学術集会(2020年9月14日-30日、WEB開催)にて「宮崎県の中型野生動物における重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス感染状況調査」と題する発表を行った。本調査では、アナグマではタヌキより抗体保有率が高い傾向があることが明らかとなった。この要因としては、動物種ごとの生態学的要因や捕獲季節など様々な要因が影響している可能性があり、現在引き続き解析を進めている。その他の感染症保有状況調査に関しては、A型インフルエンザウイルスに対する抗体検査、脳材料を用いてリッサウイルスを対象とした遺伝子検査を実施した。 加えて、対象地域における野生動物の分布・分散状況の解明および病原体の保有・拡散に関する要因を明らかにするために、動物の個体識別を実施している。さらに、関係機関から収集した行政データを利用した野生動物の個体数の増減や季節変動に関する統計学的解析を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生動物の入手のタイミングは事前予測が困難であることや、一時期新型コロナウイルス感染症対策のために当初の予定通り実験を進められない時期があったことから、全体計画としてはやや遅れている。次年度は、今年度の反省を活かして実験計画のスムーズな調整を行いたい。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、野生動物検体の採集を継続する。感染症の保有状況調査、血清疫学調査を継続する。野生動物の組織から抽出したDNAを用いて個体識別を行い、対象地域の中型野生動物の集団遺伝構造について解析する。これらをもとに、野生動物の分散状況と感染症伝播状況についての解析・評価を進める。また、行政データを利用し、感染症の伝播に影響を及ぼしうる野生動物の生態学的要因(個体数増減等)を評価するための解析を行う。次年度はこれまでの解析結果についてまとめ、引き続き研究成果を学会発表や学術論文として発表していきたい。
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Causes of Carryover |
野生動物の個体識別のために必要な試薬の購入および機器(Genetic Analyzer)の利用料の支払いのために予算を計上していたが、今年度の研究進捗状況がやや遅れていたため当初予定した使用額に達しなかった。次年度、今年度の未使用額を使用して解析を継続したい。
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Research Products
(3 results)