2022 Fiscal Year Annual Research Report
野生動物の集団遺伝構造解析からアプローチする感染症生態学についての研究
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19K15984
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
兼子 千穂 宮崎大学, 産業動物防疫リサーチセンター, 特別協力研究員 (20811706)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 野生動物 / 生態 / 感染症 / タヌキ / アナグマ / 人獣共通感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症の新興・再興を制御するためには、野生動物を含めた生態系内の感染症の動態を捉える必要がある。特に山間部から農村部、都市部などのヒト・家畜・伴侶動物の生活圏まで広範囲に生息する中型野生動物の分布や移動は地域の感染症伝播に影響を及ぼす可能性がある。本研究では、中型野生動物が生態系内で感染症伝播に果たす役割を明らかにすることをゴールに掲げ、山間部から農村部、都市部まで広く生息するタヌキおよびアナグマについて対象地における遺伝的交流と感染症保有状況について調査した。2018年12月から2021 年12月までに宮崎県内の異なる生息環境を含む地域において、有害鳥獣捕獲またはロードキルにより死亡した個体を収集した。収集位置情報の明らかであったアナグマ65検体、タヌキ55検体についてマイクロサテライトを利用した集団遺伝構造解析を実施した。 過去の研究では、交通量の多い道路などによって隔たれた近接した異なる二つの地域のタヌキは遺伝的に隔絶されていることや、狭い地域に生息するキツネ集団でも線路などの人工物や大きな河川によって活発な移動は妨げられていることが報告されている。しかしながら、本研究の調査対象地域に生息するタヌキおよびアナグマについて、今回の研究では明らかな分集団は検出されなかった。このことから、本調査地域は大きな河川や交通量の多い道路を含むものの、域内に生息するタヌキおよびアナグマは広く行き来があり遺伝的な交流があると考えられた。また、病原体保有状況調査結果から、タヌキとアナグマにおいて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の有病率が高いことが明らかとなった。故に、本研究結果からは、調査対象地域では広範囲にタヌキ・アナグマの行き来がありそれに伴い感染症の原因となる病原体の移動も起こりうることが示唆された。特にSFTSに関しては、研究対象地域では広く感染の機会があることが示唆された。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Seroprevalence of severe fever with thrombocytopenia syndrome virus in medium-sized wild mammals in Miyazaki, Japan2023
Author(s)
Kaneko, C., Mekata, H., Umeki, K., Sudaryatma, P. E., Irie, T., Yamada, K., Misawa, N., Umekita, K., Okabayashi, T.
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Journal Title
Ticks Tick borne Dis
Volume: 14
Pages: 102115
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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