2021 Fiscal Year Research-status Report
ミニチュア・ダックスフンドに好発する非再生性貧血の病態解明
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19K15991
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森下 啓太郎 北海道大学, 獣医学研究院, 助教 (30637046)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 非再生性貧血 / ミニチュア・ダックスフンド / 脾臓 / 補体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦のミニチュア・ダックスフンドには、原因不明の非再生性貧血が好発する。本研究では脾臓摘出によって造血能が劇的に回復するという知見を基に、罹患犬の脾臓が骨髄の赤芽球造血に及ぼす影響を調査し、その病態を明らかにすることを目的とした。 貧血の原因をTGF-βシグナル異常に起因する造血障害としてとらえ、脾臓におけるTGF-βの過剰産生の有無を遺伝子・タンパク質レベルで解析した。治療効果を判定可能であった9頭に対し脾臓におけるTGF-β関連分子のmRNA発現量をリアルタイムPCR法で定量したところ、脾摘有効群は無効群に比べTGF-β発現が高い傾向を得た。TGF-β受容体, SMAD-2, SMAD-3, SMAD7に関しては一定の傾向は認められなかった。しかし摘出した脾臓を対象とした免疫組織化学ではTGF-β発現を観察することはできなかった。 脾臓摘出術によって輸血依存性が改善した4症例に関して、脾摘前後の血清を対象にSWATH-MS法による網羅的タンパク質解析を実施した。その結果、術前後に有意な変動を示したタンパク質として補体活性調整蛋白や補体の終末経路を担う分子が同定され、術前に補体経路の活性が亢進している可能性が示唆された。 摘出した罹患犬の脾臓15サンプルを用いてRaNA-Seqを実施し、結果を健常コントロール群と比較したところ、罹患犬の脾臓では一部のS100familyの発現が亢進していることが明らかとなった。一部のS100タンパク質は補体の調整にも寄与しているため、プロテオミクスの結果との関連性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
摘出した脾臓サンプルを用いて、①リアルタイムPCR法によるTGF-β関連分子のmRNA発現解析、②ウェスタンブロット法によるTGF-βのタンパク質発現量の半定量、③TGF-βに対する免疫染色を実施したが、タンパク質レベルでの発現が確認できなかった。 当初計画では次の検討として罹患犬の骨髄液を対象としたTGF-β関連分子のmRNA発現量のリアルタイムPCR法を実施する予定であったが、サンプル量に制限がある骨髄液を用いた検討を実施する前に、原因分子のスクリーニング検査が必要と考え、脾摘前後の血清サンプルを対象にプロテオミクス解析を行い、術前・術後に明確な変動を示すタンパク質の有無を網羅的に解析した。また罹患犬および健常犬の脾臓より採取したRNAサンプルに関しても3'RNA-Seqを行い網羅的な遺伝子発現解析を実施した。 プロテオミクス、3'RNA-Seqの解析は終了したが、新型コロナの影響でその後継続的な研究の実施が困難であったため、その後の検証作業がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
脾摘前後の血清サンプルを対象にプロテオミクス解析、および脾臓の3'RNA-Seqの結果に基づき、以下の計画を進める。 ①罹患犬脾臓でRNA発現量が亢進していた特定のS100 familyについて、脾臓組織を用いて免疫組織化学を行い、発現細胞を同定する。 ②脾摘前後の血清サンプルを用いて、補体関連蛋白およびS100 familyの血清中濃度をELISAで測定する。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響で継続的な研究活動ができなかったこと、国外における学会発表の機会を失ったことから次年度使用額が生じた。使用計画は以下の通りである。 ・6月にアメリカで開催される米国獣医内科学会への渡航費・参加費 ・抗体、ELISA kitの購入
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Research Products
(1 results)