2019 Fiscal Year Research-status Report
ウシ乳腺において常在細菌叢が白血球の免疫応答能に及ぼす影響
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19K16004
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Research Institution | Rakuno Gakuen University |
Principal Investigator |
権平 智 酪農学園大学, 獣医学群, 助教 (80795089)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アミノ酸 / 乳房炎 / ウシ / 体細胞数 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、乳腺における常在細菌叢とアミノ酸が白血球の免疫機能修飾に及ぼすメカニズムの解明を試みることである。常在細菌叢の生命活動は宿主の免疫機能を調整することが知られており、乳腺環境においても常在細菌叢による免疫システムの制御が行われている可能性が高い。乳房炎に罹患しにくいウシと繰り返すウシの常在細菌叢を解析することで、乳腺感染に対する抵抗性を示す条件が明らかになる可能性がある。常在細菌叢の代謝産物であるアミノ酸が白血球の免疫機能修飾を担うことが報告されており、乳汁中のアミノ酸バランスを明らかにすることがその指標となると考えられる。 供試牛は大学研究農場で飼養される泌乳牛を使用して、搾乳前に乳頭をヨード液にて浸漬消毒、濡れタオルおよび乾燥タオルにて清拭、アルコール綿にて乳頭を消毒したのち採乳を実施した。同時に採血も実施し、血漿を冷凍保存した。乳汁は体細胞数を測定し、乳清を冷凍保存した。乳清からアミノ酸を抽出して質量分析により必須アミノ酸を含む40種類のアミノ酸を定量した。その結果、健康な乳汁のアミノ酸バランスを明らかにするとともに、乳房炎の乳汁においては、健康な乳汁と比較して、アミノ酸バランスに違いが認められることが明らかとなった。特に、必須アミノ酸が乳房炎の乳汁で高い値を示すことが明らかとなった。これは乳房炎の罹患とアミノ酸が関連していることを示唆するものである。今後はこの必須アミノ酸が乳腺腔内における感染のどのタイミングにおいて上昇するかを検討する。すなわち、細菌に感染し、白血球の流入とともにアミノ酸レベルも同時に上昇するか、または乳房炎の臨床症状を示す前に上昇しているのかを検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、乳腺における常在細菌叢とアミノ酸が白血球の免疫機能修飾に及ぼすメカニズムの解明を試みる。当該年度において、同一飼育環境における臨床的に健康な泌乳牛の常在細菌叢とアミノ酸レベルを明らかにすることが当初の実施予定であった。当該年度において、ウシ乳汁中のアミノ酸レベルについては横断的なアミノ酸レベルについては明らかにすることができた。つまり、牛群のある一時期におけるウシ乳汁中のアミノ酸レベルについては明らかにすることができた。しかしながら、ウシ乳汁中のアミノ酸濃度については同一個体における分娩直後から乾乳期に至る泌乳期全体を通した乳汁アミノ酸についてその濃度は明らかとなっていない。このため、同一個体における全ての泌乳期を通した採乳および採血を現在進行形で実施している。この泌乳期を通した採乳からアミノ酸バランスを調べることで、分娩後日数、分娩数、月齢や泌乳量によるアミノ酸バランスの違いを考慮した上で、健康な泌乳牛のアミノ酸レベルを明らかにすることができる。まずはこれらの基礎的なウシのアミノ酸濃度を明らかにするとともに、乳房炎罹患牛とアミノ酸バランスの関係性をより詳細に精査する。また、乳汁中の常在細菌叢とアミノ酸の関係性を明らかにするために、菌叢解析を実施することを計画していた。その解析に使用する検体について、乳汁から体細胞を取り除き細菌を濃縮した後に菌叢解析を実施するのだが、まずはその手法の確立をする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進方針について、前年度において明らかとなった乳房炎とその乳汁中のアミノ酸バランスの関係性をより詳細に明らかにする。具体的には、ウシ乳汁中のアミノ酸濃度について分娩直後から乾乳期に至る泌乳期全体を通した乳汁アミノ酸バランスを明らかにする。このため、同一飼育環境における牛群から泌乳期を通した採乳および採血を実施する。この泌乳期を通した採材検体からアミノ酸バランスを調べることで、分娩後日数、分娩数、月齢や泌乳量によるアミノ酸バランスの違いを考慮した上で、健康な泌乳牛のアミノ酸レベルを明らかにすることができる。まずはこれらの基礎的なウシのアミノ酸濃度を明らかにするとともに、乳房炎罹患牛とアミノ酸バランスの関係性をより詳細に精査する。さらに乳汁中の常在細菌叢を明らかにするため、乳汁から細菌を抽出する効率的な方法を検討する。乳汁から体細胞を取り除き、細菌を濃縮した後に菌叢解析を実施する必要があり、乳汁から効率的に細菌を分離する方法の検討が必要である。この検討についても今後進めてくが、うまくいかなかった場合は体細胞も混入した状態で菌叢解析を実施することも考える。また、当初の研究計画であるアミノ酸が及ぼす白血球の機能修飾についても検討を進める。
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Research Products
(1 results)