2019 Fiscal Year Research-status Report
αシヌクレインのアミロイド凝集性における種間差異の要因を計算化学的に解明する
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19K16058
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大滝 大樹 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50632858)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アミロイド / 分子動力学計算 / αシヌクレイン / プリオン / βシート / 疎水性相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,計算化学手法を用いてアミロイドの相互作用や動的構造ゆらぎなどを評価し,種間におけるアミロイドの凝集性の差を分子論的な立場から説明することである。種間におけるアミノ酸配列の僅かな差異が凝集性に大きく影響する原因について明らかにすることは,構造生物学的な観点のみならずアミロイドが関与する神経変性疾患の研究としても大きな意義がある。 令和元年度は,ヒトα-シヌクレインアミロイドを初期モデルとして変異型のモデルアミロイドを作成し,分子動力学計算を行った。得られたトラジェクトリからβシート化傾向,構造揺らぎ,水素結合・疎水性相互作用の存在割合を算出し,変異によりどのような相互作用が生まれるか/失われるかを調べた。相互作用解析の結果については,ネットワーク解析の手法を導入して可視化することにより違いを見やすくした。その結果,一箇所の変異でも安定性が大きく異なること,変異の影響は変異箇所周辺だけでなくβシート間の相互作用を介して広範囲に及ぶことなどが明らかになった。また,疎水性残基の側鎖の長さがアミロイドの構造安定性に大きく影響している可能性が示唆された。さらに,α-シヌクレインアミロイドの計算から得られた知見をもとにプリオンの部分アミロイドのモデルを作成し,分子動力学計算を実行した。プリオンタンパクのアミロイドの構造は未だに分かっておらず,既知のアミロイド構造から計算化学手法により構造を予測・解析することはプリオン研究の大きな助けとなる。計算結果は実験で見られるプリオンの凝集性の違いを部分的に説明できるものであり,疎水性残基の僅かな違いが構造安定性にどのように影響するかについて分子構造の観点から示唆を与えることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りにα-シヌクレインアミロイドのモデル構築,分子動力学計算および解析を行うことができた。また,α-シヌクレインの計算で得られた知見を活かし,プリオンのモデル構築や計算を実行し,研究の方向性を広げることができた。論文については令和2年度初旬に投稿を予定している。これらのことから,本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
分子動力学法だけでなく,量子化学計算やネットワーク解析を用いてα-シヌクレインアミロイドの解析を行う。また,近年のクライオ電子顕微鏡の進化に伴い,α-シヌクレインアミロイドのリポジトリ登録件数が増えてきている。これらの構造は互いに少しずつ異なるため,構造を精査し,状況に応じて分子動力学計算による解析を追加して行う。令和元年度の解析結果と比較して,α-シヌクレインアミロイドの構造について新たな知見を引き出したいと考えている。プリオンのモデル計算の研究についてはできるだけ早く論文化したい。
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Causes of Carryover |
一部消耗品の購入を見送ったことと,論文の準備が遅れ,投稿にかかる費用が次年度へずれこむ見通しとなったことが理由として挙げられる。英文校閲費および投稿費として使用する予定である。
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Research Products
(16 results)