2019 Fiscal Year Research-status Report
雄性生殖細胞におけるエピゲノムの成立機構と、その次世代に及ぼす影響
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19K16141
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北 加奈子 大阪大学, 医学系研究科, 特別研究員(RPD) (60813631)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | de novo DNA メチル化 / piRNA / PIWIファミリータンパク / MORCファミリータンパク / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
胎仔期雄性生殖細胞におけるレトロトランスポゾン領域のde novo DNAメチル化の分子機構を解明するために、PIWIファミリータンパク質の1つであるMIWI2と機能的関連を有するタンパクとして同定したMORC3(microrchidia 3)の胎仔期精巣での機能解析を中心に、次世代を生み出す生殖細胞におけるエピゲノム成立機構の一端を解明する目的で研究を行っている。 初年度、生殖細胞特異的Morc3コンディショナルノックアウトマウスの胎仔期精巣において、piRNA産生に影響があるかどうかをRNA sequence法を用いて調べた。野生型に比べてMorc3コンディショナルノックアウトマウスの胎仔期精巣では、piRNAの総産生量が半分程度に減少していることが明らかとなった。更に、先進ゲノム支援の協力のもと、野生型とMorc3コンディショナルノックアウトマウスの胎仔期精巣を実験材料に、抗MILI抗体及び抗MIWI2抗体を用いて、MILI及びMIWI2に結合しているpiRNAの種類及び量をsmall RNA sequence法を用いて調べた。その結果、Morc3コンディショナルノックアウトマウスでは、MILI及びMIWI2のどちらのタンパクにおいても、結合しているpiRNAの量が減少していることが明らかとなった。これらのことから、Morc3コンディショナルノックアウトマウスで認められるpiRNA産生量の低下、及びそれによるMILI及びMIWI2に結合するpiRNA量の減少が、胎仔期精巣におけるレトロトランスポゾン領域のde novo DNAのメチル化の低下に影響していることが示唆された。 また、次世代への影響として、交配テスト、及び胚発生の観察を行った結果、Morc3コンディショナルノックアウト雄マウスでは、妊孕性の低下傾向及び、次世代における胚発生率の異常が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備的成果から、MORC3は、胎仔期雄性生殖細胞において、レトロトランスポゾン領域、特にLINE-1のde novo DNAメチル化の獲得に大きな役割を果たしていることが示唆された。そこで、今年度は、MIWI2と機能的関係性を有するpiRNAとMORC3の関連を調べるために、胎仔期雄性生殖細胞を実験材料に、NGS解析を行った。その結果、Morc3コンディショナルノックアウトマウスでは、piRNA産生量の低下、及びそれによるMILI及びMIWI2に結合するpiRNA量の減少がみとめられた。これらのことから、胎仔期精巣において、MORC3はpiRNAの産生に関与し、レトロトランスポゾン領域のde novo DNAのメチル化へ影響を与えることが示唆された。 また、次世代への影響として、交配テスト、及び胚発生への影響を調べた結果、Morc3コンディショナルノックアウト雄マウスでは、妊孕性の低下、及び、次世代における胚発生率の低下傾向が認められたとこから、更に詳細に原因を解明したいと考えている。 胎仔期雄性生殖細胞におけるde novo DNAメチル化機構に関わる新たな分子の探索を行うために、Line-1の制御領域を認識し結合するZFタンパクを発現するTGマウスの胎仔期精巣を必要量採取し、抗Flag抗体を用いて免疫沈降を行い、質量分析によりMIWI2の標的領域に結合するタンパクとして、CNOT1(CCR4-NOT transcription complex subunit 1)を同定した。 以上のことから、順調に実験は遂行できており、次年度も引き続き実験計画に基づいて進めていきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Morc3コンディショナルノックアウト雄マウスを用いた交配テスト、及び自然交配による胚発生の観察を行った結果、Morc3コンディショナルノックアウト雄マウスでは、妊孕性が低い傾向、また、次世代における胚発生の異常が認められた。そこで、今後は更に、Morc3コンディショナルノックアウトマウスの精子を採取し、精子成熟過程で特異的に発現している遺伝子を指標とし、野生型と比較して発現に違いがあるかどうかについて、ウエスタンブロット法や免疫染色法などを用いて解析する。 また、胎仔期生殖細胞におけるde novo DNAメチル化機構に関わる分子の候補として、CNOT1(CCR4-NOT transcription complex subunit 1)を同定した。共同研究先である、山本雅先生(沖縄科学技術大学院大学(OIST))より、CNOT1(Fl/Fl)マウスの譲渡を受け、そのマウスとTnap-Creマウスとを交配し、[CNOT1(Fl/Fl), Tnap-Cre]コンディショナルノッ クアウトマウスの作製に着手している。次年度は、この生殖細胞特異的CNOT1コンディショナルノックアウトマウスを用いて、CNOT1の生殖細胞における機能を解析していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
生殖細胞特異的CNOT1コンディショナルノックアウトマウスの胎仔期精巣を実験材料に、RNAシークエンスの受託解析を行う予定であったが、今年度中に目的のマウスが得られなかったため、その受託解析を依頼できず、それに必要な費用が使えなかった。そこで、その実験を遂行するために、来年度の必要予算経費として使用したいと考えている。
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