2022 Fiscal Year Research-status Report
円口類ヌタウナギの体液調節機構:適応戦略を決定する分子基盤の解明に向けて
Project/Area Number |
19K16178
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
山口 陽子 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (70801827)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 円口類 / ヌタウナギ / 体液調節 / 内分泌系 / 塩分適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、円口類ヌタウナギにおける個体・細胞レベルの体液調節機構とその内分泌制御について検証することを目的とする。昨年度までに、既知の体液調節関連機能分子群のホモログをヌタウナギで同定し、特に下垂体後葉ホルモン受容体の組織局在や分子・機能進化に関して研究を進めてきた。本年度は上記の成果を論文として国際学術雑誌に発表し、掲載巻の表紙を飾るカバーアートに選出された。 並行して、環境塩分濃度と体液調節関連分子の発現量に関する解析を進めた。1)血中の主要なオスモライトであるNa+およびCl-の輸送に関わる分子群、および2)細胞レベルの浸透圧調節に重要なアミノ酸輸送体群に着目し、異なる塩分濃度(70%、100%および140%海水)に馴致した計18個体(6個体/群)の鰓、腎臓および筋肉のmRNA-Seq結果にから、各分子の遺伝子発現レベルとそれに対する環境塩分濃度の影響を調べた。1)について、他の動物種では鰓や腎臓にsolute carrier family 12(SLC12)に属する輸送体群(特にSLCA1-A3)が発現し、塩類輸送において主要な役割を果たす。ヌタウナギも同輸送体群をもつが、発現レベルが極端に低く、ほぼ機能していないことが示唆された。一方で、その他の塩類輸送体の中には、鰓や腎臓で高発現するものもあり(上皮性ナトリウムチャネルやSLC26A6など)、ヌタウナギの鰓や腎臓が、これまで考えられていたよりも複雑な塩類輸送システムを備えることが示された。この結果は「ヌタウナギの体液調節戦略は祖先的な形質である」という従来の見解に一石を投じる。2)については、複数のアミノ酸輸送体の動態から、ヌタウナギが環境水(鰓)および原尿(腎臓)からアミノ酸を吸収する能力をもち、各組織におけるアミノ酸吸収量が環境塩分濃度依存的に変化することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究成果の論文発表を控えているほか、鰓と腎臓における各種機能分子の組織内局在について追加解析を予定しているため(「今後の研究の推進方策」参照)。本研究は当初、2021年度を最終年度とする3カ年で計画していたが、進捗状況を鑑みて、昨年度に引き続き補助事業期間の延長を申請した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果を基にして、鰓と腎臓における各種機能分子の組織内局在をISHで調べる。本来この内容は2022年度中に実施する予定だったが、同年度前半に研究代表者が体調を崩して進捗が停滞したため叶わなかった。並行して、2022年度の研究成果をまとめた論文の投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
2022年度前半は研究代表者の体調不良により進捗が停滞し、予定していた実験の一部を遂行できなかった。次年度使用額は、研究試料採集のための旅費や、ISH関連試薬類の購入費ならびに成果発表費用に充てる。
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Research Products
(2 results)