2021 Fiscal Year Research-status Report
Rapid evolution and species coexistence under environmental fluctuations
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19K16223
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山道 真人 長崎大学, 熱帯医学研究所, 客員准教授 (70734804)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 迅速な進化 / 多種共存 / ストレージ効果 / 相対的非線形性 / 環境変動 / 絶滅 / 適応 / 表現型可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物集団中の対立遺伝子頻度が短い時間スケールで適応的に変化する「迅速な進化」は、形質の変化を通じて個体群動態をはじめとするさまざまな生態学的プロセスに影響しうる。しかし、群集生態学の中心的な問いである「競争排除則にも関わらずなぜ多くの種が共存するのか」という問題において、迅速な進化が果たす役割については未解明の点が多い。 そこで本研究では、時間的・空間的な環境変動のもとで遺伝的多様性と種多様性が複雑に相互作用する生態進化動態を、数理モデル解析・数値計算・文献調査を通じて明らかにすることを目的とする。特に、Peter Chessonが提唱した共存理論の枠組みで調べられてきた、時空間的な環境変動のもとでストレージ効果・相対的非線形性などの機構が競争排除・多種共存に与える影響を、迅速な進化を通じて捉え直すことを主眼としている。 2021年度は、Chessonの共存理論についての日本語総説論文を出版し、普及を図るとともに、迅速な進化による適応的な採餌が、gleaner(落ち穂拾い)とopportunist(日和見主義者)のトレードオフと相対的非線形性を介した共存を促進する効果についての理論研究を発表した。さらに、迅速な進化が生態的・繁殖的形質置換を介して多種共存をもたらす条件を調べ、繁殖的形質置換における進化速度の重要性を明らかにした理論研究を発表した。また、迅速な進化によって個体数を振動させつつ共存する2種に対して、Chessonの共存理論の代表的な指標である「ニッチ分化」と「競争能力の比」をどのように定義すれば共存を評価できるか、という点についての理論研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Chessonの共存理論についての和文総説を出版した。また、迅速な進化・表現型可塑性が個体数振動を安定化することで、相対的非線形性を介した共存が起こることを示した数理モデル論文を発表した。さらに、迅速な進化によって個体数を振動させつつ共存する2種に対して、Chessonの共存理論の指標である「ニッチ分化」と「競争能力の比」をどのように定義できるか、という点についての理論研究を行なった。この他にも、ストレージ効果・相対的非線形性というメカニズムから、群集生態学・集団遺伝学のアナロジーを考察する総説執筆の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
相対的非線形性だけでなく、ストレージ効果においても迅速な進化が多種共存を促進すると考えられるため、これについても調べる予定である。さらに、相対的非線形性が遺伝的多様性を維持する条件についても、集団遺伝学モデルを構築し解析を進める。また、環境変動のもとで多様性が維持されるプロセスにおける類似性・非類似性という観点から、群集生態学・集団遺伝学における種多様性・遺伝的多様性を比較する総説執筆の準備を進めている。
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Causes of Carryover |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、出張・研究計画に変更が生じたため、2022年度に論文掲載料・旅費・物品購入費として使用する予定である。
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