2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating effects of management practices on deer by measurements of stable isotope ratio in bone-collagen and carbonates of deer teeth
Project/Area Number |
19K16238
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
原口 岳 総合地球環境学研究所, 研究部, 外来研究員 (90721407)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 同位体地図 / 多元素安定同位体分析 / 化合物特異的同位体分析 / 鳥獣被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はシカの生態変化の解明を目的として実施する同位体分析のための試料の調製・前処理方法の検討を実施した。分析試料として、齢査定ならびに各種安定同位体分析に用いる、捕殺されたシカの歯と、シカの主なエサ源の候補となる植物を代表する、ササ・イネの葉を採取した。歯の試料については抜歯を依頼したものの、多くの試料が肉ごと切り取られていたため、まず酵素反応による肉の除去を試みた。ササ・イネの葉については、酸素同位体分析の対象となるセルロース成分のみを抽出した。セルロース抽出は当初、別プロジェクトにおいて収集した動物園由来の飼料を供試し、抽出方法の確立を試みた。また、動物園由来の飼料と糞から抽出したセルロース成分の測定結果を比較することによって、消化の過程においてセルロース中の酸素同位体比が変化しない、すなわち採餌内容の同位体比が糞に反映されることを検証中である (解析中)。併せて、上記のパイロット研究を通じて、セルロース抽出の方法に改良を加え、抽出開始当初と比較して倍程度のスループットで抽出作業をおこなえる体制を整えた。最後に、本研究上酸素同位体比を測定する上で必要となるワーキングスタンダードの調整をおこなった。この分析においては従来IAEA-601・IAEA-602のスタンダードが用いられてきたが、これらは安息香酸の純物質であることから未知試料と同じ方法によって処理することが出来ない (凍結乾燥処理をおこなうと昇華する) 難点があった。そこで、抽出セルロースのスタンダードであり、別ロットの同一の物質について、IAEA-CH-3の名にて酸素同位体比の値決めが為されている標準物質 (IAEA-C-3) を粉砕し、ワーキングスタンダードとして調整した。このワーキングスタンダードを国際標準物質と共に測定してIAEA-CH-3の公称値と比較し、相互に違いが無いことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画において、シカの体組織の同位体分析の比較参照の対象となる同位体地図としては、少数の試料測定と、酸素同位体組成に影響を及ぼす気象・地形条件をパラメータとするモデル化によって作成することを考えていたが、試験的な同位体分析の結果、植物の酸素同位体組成に影響を及ぼす要因は更に複雑であり、日照条件や微地形の影響を受けることが示唆された。そこで、シカの体組織の同位体分析と並行して、シカの摂食内容を示す糞の酸素同位体分析をおこない、シカの摂食内容についての同位体地図を作成することとした。当該の分析のためのセルロース抽出作業を現在進めている段階である。また、研究代表者は令和2年度より大阪府立環境農林水産総合研究所生物多様性センターに研究員として着任した。異動に伴い、今後、標記の同位体地図を作成するための試料収集がより体系的に実施できる利点がある一方、自身の研究へのエフォート配分の縮小が想定される。そのため、今後の研究推進方策に示すように、課題遂行上の重点事項を絞って分析計画を再検討する。以上の通り、研究計画の一部とエフォート配分に変更を伴う予定であるが、個別サブテーマの研究で用いる分析手法については概ね目処が立ちつつあると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、新型コロナウィルス対策に関連して実験設備の使用に制限を受けているが、状況を見ながら分析および試料前処理の機会と時間の確保を図っていけるものと判断している。また、分析を進めることが困難な期間中は昨年度までにおこなった分析結果についてとりまとめ、投稿論文として発表するための準備を進める。併せて、研究代表者の所属が変更となったことから、試料収集の体制については計画の見直しをおこなう。現時点では、頻繁に大阪府内の生物を広く調査対象としている研究機関に所属変更となったことにより、大阪府内の同位体地図を作成するうえで良好な研究環境が整ったと考えており、2020年度、当該の研究機関の利点を活かして、より一層の研究展開を検討する。一方で、昨年度の機材・消耗品の購入により、分析に先立つ試料の前処理に関して、多くの部分を異動先で実施出来るように体制を整備した。とはいえ、全てを所属機関で完遂することは困難であること、2019年度までの所属機関 (総合地球環境学研究所) まで出張することは比較的容易であることから、必要な部分については総合地球環境学研究所および京都大学農学研究科の設備を利用させていただくなど、各方面の研究協力者より助力を願いながら本課題を継続していける環境を維持していく考えである。
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[Presentation] Vertical seed dispersal of Japanese crowberry by Japanese black bears and birds: estimation using stable oxygen isotope ratios2020
Author(s)
Takahashi, K., Naoe, S., Saeki, K., Koide, Y., Amari, T., Tsunamoto, Y., Tayasu, I., Haraguchi, T., Takahashi, K.
Organizer
Frugivores & Seed Dispersal Conference
Int'l Joint Research
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[Presentation] 兵庫県千種川流域における硝酸イオンおよび硫酸イオンの季節的動態の比較 (Contrasting seasonal dynamics of nitrate and sulfate in Chikusa River watershed, Hyogo, Japan)2020
Author(s)
藤吉麗, 陀安一郎, 藪崎志穂, 原口岳, 由水千景, 大串健一, 古川文美子, 伊藤真之, 山本雄大, 横山正, 三橋弘宗
Organizer
日本生態学会
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[Presentation] Dynamics of sulfate and nitrate inferred from stable isotope techniques in Chikusa river watershed, Hyogo Prefecture2019
Author(s)
Fujiyoshi, L., Tayasu, I., Yabusaki, S., Haraguchi, T.F., Yoshimizu, C., Ohkushi, K., Furukawa, F., Itoh, M., Yamamoto, Y., Yokoyama, T., Mitsuhashi, H.
Organizer
日本地球惑星科学連合 (JpGU)
Int'l Joint Research
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[Presentation] 兵庫県千種川流域における硝酸イオンおよび硫酸イオンの季節的動態の比較 (Contrasting dynamics of nitrate and sulfate in Chikusa river watershed, Hyogo, Japan)2019
Author(s)
藤吉麗, 陀安一郎, 藪崎志穂, 原口岳, 由水千景, 大串健一, 古川文美子, 伊藤真之, 山本雄大, 横山正, 三橋弘宗
Organizer
同位体環境学シンポジウム
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