2020 Fiscal Year Research-status Report
神経細胞・アストロサイト・脳血流の活動計測による安静時機能結合の神経基盤の解明
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19K16252
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 鉄平 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (10725948)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脳活動イメージング / カルシウムイメージング / 機能的MRI / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、覚醒時の大脳皮質におけるRS-fMRIの機能的結合の神経基盤を、自発的神経活動・アストロサイト活動・脳血流の関係から明らかにすることである。本研究の学術的独自性は、先行研究が麻酔下の動物を主に用いて機能的結合の神経基盤を調べて来た事に対して、覚醒下の動物を使用することである。また、先行研究が感覚刺激に対する神経活動・アストロサイト活動・脳血流の関係を調べて来た事に対して、安静時の自発的活動に着目する点も本研究の独自性である。最後に、神経活動と脳血流の2つの関係だけでなく、そこにアストロサイト活動の観察を組み込む事が本研究の創造的な部分である。 本年度は昨年度作成した神経活動と脳血流の同時イメージング装置を用いて薬剤投与かのマウス大脳皮質における神経活動の異常が脳血流の変化へどのように変換されているかを調べた。その結果、神経活動の異常のうち高周波の成分が脳血流ではほとんど見えていないことが明らかになった。一方、脳血流では神経活動には見られない定常的な変化が起きることが確認された。このことは、薬剤投与による大脳ネットワークの活動異常が、神経活動と脳血流で大きく異なる仕方で現れることを実証するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画は想定よりも進展したと考えている。本年度の目標は、神経活動と脳血流の同時計測により両者の対応関係を明らかにすることであったが、代表者自身のものを含めた先行研究では神経活動と脳血流は良く対応することが予想されていた。しかしながら、昨年度に新しく開発した同時イメージング装置により実際に計測したところ、薬剤を用いた大脳ネットワークの擾乱では神経活動と脳血流が大きく乖離することが明らかになった。この発見は予想外であり、この発見により脳の代謝活動についての理解が深まる可能性が高い。また、この薬剤は精神疾患モデルとしても使われるものであり、今回見られた神経活動と脳血流の乖離は臨床的にも重要な意義を持つ可能性が高い。 以上の理由により、本研究は当初の計画よりも進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した装置や得られた研究結果を論文として報告する。新型コロナウイルスの影響で十分量のデータ取得に時間が必要となったため論文作成は次年度に継続して行う。
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Causes of Carryover |
当初の計画では期間内に論文発表を行う計画であったが、新型コロナウイルスの影響により実験研究が遅れた。そこで次年度以降に計画を継続し、論文発表まで完遂する計画である。予算は論文発表に必要な英文校閲・投稿費用や追加実験を行う際の経費として使用する。
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Research Products
(3 results)