2021 Fiscal Year Research-status Report
脳内の軸索再伸長をターゲットとしたアルツハイマー病の根本的治療法の開発
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19K16288
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
楊 熙蒙 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 助教 (80818922)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 軸索再伸長 / 記憶回復 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、薬物diosgeninがアルツハイマー病モデル(5XFAD)マウスにおいて、脳内の萎縮した軸索を再伸長させるかどうかを検証し、脳で軸索が正しく再伸長するための新規分子メカニズムを解明することを目的としている。また、脳での軸索再伸長が直接的に記憶回復に関わるかどうかを機能学的に証明することも目指す。 昨年度までの研究成果として、5XFADマウスにdiosgeninを投与すると、記憶形成に関わる海馬ー前頭前野において、軸索がつながるべき脳部位に再伸長することを明らかにした。また、軸索が再伸長した神経細胞中において、発現量が最も増加した因子として、タンパク質A(未発表データのため、名称は秘匿)を見出した。神経細胞特異的にタンパク質Aが過剰発現されるAAV9ベクターを用いて、5XFADマウスの海馬にタンパク質Aを過剰発現すると、マウスの記憶障害が回復し、前頭前野に向かって軸索が再伸長した。さらに、タンパク質Aが神経細胞中で増加した後、どのように軸索が正しいターゲットに伸びるかについて詳細の分子メカニズムも明らかにした。 本年度は、脳での軸索再伸長が直接的に記憶回復に関わるかどうかについて、本課題にとって最も重要な知見を検証した。DREADDシステムを用いて、タンパク質Aを過剰発現した海馬神経細胞のうち、軸索が前頭前野に向かって再伸長したもの特異的に神経活動を抑制した。その結果、タンパク質A過剰発現による記憶改善作用は完全に打ち消された。つまり、脳での軸索再伸長が、記憶回復の直接的かつ十分な要因であることを機能学的に証明した。 現在は、本タンパク質A以外の候補タンパク質(2番目に発現増加したタンパク質B)にも着目しており、同様に過剰発現による作用とその分子メカニズムを解明することを目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度に実施予定であった、脳での軸索再伸長と記憶回復の機能学的証明についての一連の動物実験を終了し、アルツハイマー病における本課題の重要性を示すことができた。また、来年度以降に実施予定であった、脳での軸索再伸長に関与するタンパク質A以外の因子について、既に種々の機能解析に着手しており、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
タンパク質A以外の候補タンパク質(2番目に顕著に発現増加したタンパク質B)について、神経細胞への過剰発現による記憶回復作用及び軸索再伸長作用を検討する。また、神経細胞でタンパク質Bが増加すると、なぜ軸索がターゲット部位に再伸長できるようになるかについて、下流の分子メカニズムも解明する。これにより、脳での軸索再伸長を担う重要分子の知見をさらに深めることを目指す。
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Causes of Carryover |
動物実験の基礎検討が順調に進み、使用予定の動物数よりも大幅に削減できたため、動物費・動物管理費に係る費用が予定よりも少なかった。また、前年度に購入済みの物品で多くの実験を行うのに十分であった。
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