2020 Fiscal Year Research-status Report
Identification and conversion of machinery for fungal oleanane triterpenoids biosynthesis
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19K16402
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
米山 達朗 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (30825675)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コルクタケ / シーケンス解析 / β-アミリン合成酵素 / シトクロムP450 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はこれまでに作成したコルクタケ Fuscoporia torulosaのゲノムデータの解析を行なった.得られたゲノムデータについて, 類縁の真菌類遺伝子と相同性比較を行うと約1万種の生合成遺伝子候補配列を得た.このうち,遺伝子機能予測を行い,得られたラノスタン類やオレアナン類の生合成に関わるオキシドスクアレン環化酵素の候補は1種であった.真菌の生存に必須であるエルゴステロールの生合成に関わるラノステロール合成酵素を欠くことはないと考えられる為,得られた候補遺伝子はオレアナン生合成酵素ではない可能性が高いと考えられる.また,オレアナン類の水酸化反応に関与すると考えられるシトクロムP450(CYP)について検索を行うと数種の候補遺伝子が得られた. また, F. torulosaの宿主樹木の鑑別を行うため徳島県にてその葉を採集した.このサンプルに対し遺伝子鑑別を行うとシイ属植物であり,さらに,葉の形態学的観察からスダジイ Castanopsis sieboldiiであると同定した.シイ属植物の樹皮にはオレアナン類が含まれている事が報告されている.このことからF. torulosaの子実体から単離されたオレアナン類はF. torulosaがこれらを取り込んだ可能性が示唆された.これらの情報から我々がこれまでに単離したオレアナン型トリテルペンは宿主が生産したオレアナン類をF. torulosaが保有するCYP等の酸化酵素を用いて代謝した可能性が高まったと考えられる. さらに採集した子実体より菌株の作成を行なった.子実体の内,外部との接触がない組織についてPDA平面培地に播種し,単離培養を行なった.得られた菌株について遺伝子鑑別を行い,子実体と同一の株であることを確認した.この菌株の代謝物についてLCMS分析を行なうと,代謝物中にオレアナン類縁体と推定される化合物は確認されなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において, オレアナン類の生合成が担子菌類によるものなのかという点が興味深い点であったが,これについて生合成遺伝子の機能予測という観点からの解決に繋がる結果が得られたものと考えられる.今後,更なる生合成酵素の探索および代謝物の探索を行う事でコルクタケの生合成能を明らかにするとともに生合成遺伝子を組み合わせた新たな化合物の作成に移行できるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムデータの解析において得られたラノステロール合成酵素と推定される酵素遺伝子について単離を行い,酵母を用いた酵素の機能解析を行う.ゲノムデータの解析より得られた遺伝子配列をもとにプライマーを設計し,ゲノムDNAの該当領域の配列について確認を行う.さらにこれまでに作成したF. torulosaの菌株を用いて, 菌体内で実際に発現している遺伝子であるmRNAを逆転写PCR法により取得する.これにより得られた遺伝子配列を酵母に導入し,その代謝物についてLC/MSを用いた解析を行う事で遺伝子機能を解析する. このときβ-アミリンの生合成が確認できなかった場合,F. torulosaにはβ-アミリン生合成能が無いと結論する一つの証拠となると考えられる. さらに,得られたオレアナン型トリテルペンの水酸化反応に関与すると考えられるCYPの候補遺伝子配列についてもその機能解析のための検討を行う.上記の解析に加え,作成したF. torulosa菌株に対してβ-アミリンの生物代謝実験 (フィーディング実験) を行い代謝物の解析を行う.培養中のF. torulosaの培地にβ-アミリンを加え代謝の進行の有無を検討する. さらに, β-アミリンの代謝が確認された条件下において再度mRNA情報を取得しこれを用いて候補遺伝子を絞り込むことでより迅速なオレアナン類代謝に関わる生合成遺伝子の探索を行う.
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Causes of Carryover |
菌株に対するフィーディング実験およびそれに伴う遺伝子情報の取得についての実験が検討段階にあるため. この検討には1クールあたり一ヶ月程度の期間を要することが考えられるがこの段階が解決できていない. 次年度は今年度の余剰資金をその遺伝子データ取得に充てる計画である.
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