2019 Fiscal Year Research-status Report
腋臭症リスク決定因子の機能阻害剤ならびに生理的基質の探索・評価
Project/Area Number |
19K16441
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊田 優 東京大学, 医学部附属病院, 特任研究員 (80650340)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | トランスポーター / 腋臭症 / 体質 / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
ワキの下から生じる特有のにおいを特徴とする腋臭症は、日本社会では特に嫌われる傾向にある疾患であり、その克服に向けた国民的関心も高く、より簡便かつ根本的な治療法の確立が喫緊の課題である。そこで本研究では、将来的な腋臭症治療薬の実現につながることを期待して、既存の承認薬から腋臭症リスク決定因子の阻害剤を探索することを目的とした。
本研究では、試験薬物による腋臭症リスク決定因子ABCC11の機能阻害活性を、ABCC11発現細胞膜小胞を用いたin vitro試験系で検討した。まず、スクリーニングに必要となるABCC11発現細胞膜小胞ならびにコントロール細胞膜小胞を同一ロットで確保するために、ABCC11過剰発現細胞ならびにコントロール細胞を大量培養し、細胞膜小胞調製に供した。次に、免疫ブロッティングにより目的タンパク質の発現を、放射ラベル基質:[1,2,6,7-3H(N)]-dehydroepiandrosterone sulfate(DHEA-S)を用いた輸送試験により目的タンパク質の機能を、それぞれ確認したのちに阻害試験を実施した。承認薬を対象とする阻害試験の結果、ABCC11によるDHEA-S輸送活性を阻害する薬物を見出すことに成功した。このうち、ABCC11を比較的強く阻害した薬物について、濃度依存性を検討したところ、そのIC50値は3.26 μMであった。なお、この濃度においてABCC11と同じABCCサブファミリーに属するABCC2の輸送活性に対する影響を検討したところ、ABCC11に対する場合とは異なり、ABCC2に対する機能阻害活性は認められなかった。現在、さらなる検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては、ABCC11阻害活性を有する薬物を研究開始初年度において見出すことができたことを踏まえ、当初の目的を順調に達成していると考えられた。そこで、本研究課題の進捗状況については、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度においては、初年度につづいて承認薬におけるABCC11阻害活性を検討するとともに、天然物なども試験対象に加える。また、得られた成果に関する論文発表・知的財産権の申請などを進める。とくに、現在投稿準備中の論文については、できる限り早い段階でのアクセプトを目指して研究を進める。なお、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、大学等における活動制限の実施を踏まえ、不測の事態が起きた場合には、適宜臨機応変に対応することを基本的な考え方とする。
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Causes of Carryover |
実験に使用予定の遺伝子組み換え動物の確保に時間がかかっているため。平成31年度/令和元年度と同様、各種試薬や実験動物購入・維持費用などの消耗品費として主に使用することになるが、一部は得られた研究成果を学会において発表するための旅費、国際誌への論文投稿のための校閲費・印刷費・研究成果投稿料としての謝金・その他の費用として使用する予定である。
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