2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16556
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上島 千幸 京都大学, 医学研究科, 技術職員 (80759449)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マスト細胞 / 妊娠 / トロホブラスト / 異所性妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの妊娠成立において、胎児母体境界に存在する免疫担当細胞は重要な役割を担う。申請者は最近、正常妊娠において胎児母体境界にあたる脱落膜に含まれる免疫担当細胞の1つであるマスト細胞が、ヒト胚を覆うトロホブラストの浸潤・血管増生を促進し、妊娠成立に関わることを報告した。しかしながら、卵管妊娠に代表される異所性妊娠(子宮外妊娠)におけるマスト細胞を含めた免疫担当細胞の役割についての報告は皆無である。本研究では、卵管マスト細胞が異所性妊娠成立に関与するのか、それはどのような機構を介してなのか、またマスト細胞増加などを明らかにする。 まず、卵管妊娠切除標本およびコントロール群となる子宮筋腫や子宮破裂切除時の卵管標本でマスト細胞数を比較したところ、正常卵管に比較して、卵管妊娠着床部ではマスト細胞の増減に関与するStem cell factor (SCF)のmRNAレベルでの発現やマスト細胞数が優位に減少していることが明らかとなった。脱落膜マスト細胞がトロホブラストの浸潤や血管増生を促進し、妊娠成立を促進することや不妊患者の一部で脱落膜に存在するマスト細胞数が減少することを報告しており、マスト細胞が卵管においても妊娠成立を阻害している可能性が示唆された。 またRNAscopeによりLeukemia inhibitory factor (LIF) の発現を確認したところ、卵管妊娠着床部のマスト細胞はLIFを発現しないことを確認した。またin vitroで、マスト細胞と共培養するとトロホブラストのCD9上昇することを確認した。CD9はトロホブラストの分化のマーカーである。 今後はマスト細胞がLIFを発現することの重要性や、CD9以外のトロホブラストの分化マーカーの増減、卵管妊娠においてなぜLIFの発現が低下するのかをin vitroおよびin vivoにおいて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異所性妊娠の代表である卵管妊娠において免疫組織化学染色でマスト細胞が減少していることその要因としてstem cell factorのmRNAレベルでの減少を確認した。また通常妊娠と比較して組織内に存在するマスト細胞に対しLIFを発現しているマスト細胞の割合が減少していることを確認した。 次に異所性妊娠にマスト細胞の減少がどのように関わるかを検証した。すでにマスト細胞がトロホブラストの浸潤や血管増生に関与することは明らかにしている。これに加え、ヒトマスト細胞のLAD2とヒトトロホブラスト細胞のHTR-8を共培養することにより、マスト細胞由来のLIFにより妊娠成立に重要なトロホブラスト細胞の分化マーカーであるCD9のmRNAレベルでの発現が増加することを明らかにした。 このようにマスト細胞が妊娠成立に関与し、異所性妊娠ではマスト細胞数やマスト細胞に発現するLIFが減少するため妊娠が破綻するのではないかと考えらる。異所性妊娠におけるマスト細胞の影響を明らかにできると考える。 一方新型コロナウイルスの影響で意見交換等の機会が減り、他の知見を得ることが難しくなっていることが不安要素である。
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Strategy for Future Research Activity |
マスト細胞とトロホブラスト細胞を共培養することによりLIFによるトロホブラスト細胞の分化マーカーであるCD9の増加を確認したが、トロホブラスト細胞の分化マーカーはCD9以外にもある。今後は他のマーカーについても増減の検証をしたいと考える。 また異所性妊娠ではSCFが減少しているためマスト細胞数が減少していると考えるが、SCFが減少する要因についても検証が必要であると考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で学会の参加や意見交換のための旅費を使用しなかったため、次年度使用額が発生した。今年度の学会や意見交換会などの機会に使用する予定である。
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