2020 Fiscal Year Research-status Report
認知予備能メカニズムの解明に向けた、コリン作動性神経の新たな観点からの解析
Project/Area Number |
19K16922
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
水野 将行 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (40748480)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 認知予備能 / アセチルコリン / 海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド(HCNP) |
Outline of Annual Research Achievements |
海馬由来コリン作動性神経刺激ペプチド(HCNP)は、中隔核培養組織でアセチルコリン(ACh)産生を促進し、HCNP過剰発現マウスはアミロイドオリゴマーによる海馬の神経活動抑制に抵抗性を示す。本研究は、認知予備能のメカニズムをACh/コリン作動性神経の観点から明らかにすることを目的にする。すなわち、①個体内でもAChを介して海馬神経活動を制御するか、②海馬へのコリン作動性神経の起始核である内側中隔核の保護作用を有するか、を明らかにする。その方法として、遺伝子改変動物(HCNPコンディショナルノックアウトマウス:KO)を作成し、行動学的解析・主にマイクロダイアリシス法を用いたAChの量的解析・中隔核のコリン作動性神経の組織学的解析をコントロール:controlと比較して行う。 2020年度は、前年度のパイロット実験の結果を参考に種々の解析・評価を行った。行動学的解析では、当初に作成したKOではcontrolと有意な差を認めなかったため、異なる遺伝子型のKOを新たに作成した。そのKOについては既に解析を進めており、記憶に関連する行動について、有意な差を認めずも差がある傾向を示した。AChの量的解析では、60週齢での測定を行ったところ、KOとcontrol間で有意な差を認めたため、第39回日本認知症学会学術集会でその成果を報告した。組織学的解析では、中隔核のChATの免疫組織学的解析を行ったが、KOとcontrolで有意な差を認めなかった。しかし海馬CA1 oriens領域ではシナプス数の減少を認めたため、その結果も認知症学会学術大会で報告した。 2021年度に向けては、海馬領域での免疫組織学的解析のデータ収集・解析を進め、行動学解析もさらに進めていき、その成果を論文報告する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロダイアリシス法によるAChの量的解析では、高齢のHCNPコンディショナルノックアウトマウスで低下していることを示した。組織学的解析では仮説通りの結果は示されなかったものの、他部位で意義のある結果を認めた。行動学的解析においても有意な差を認めなかったものの差がある傾向は認めた。2020年度の目標は概ね遂行できているものと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
行動学的解析については、さらなる高齢マウスで解析を進める。組織学的解析も、ChAT以外の免疫組織化学的解析や、中隔核以外の部位での解析を進める。
|
Causes of Carryover |
本年度も、研究室内での物品をある程度流用できたため、各解析における物品費が当初の見込みよりも少なかった。新たなコンディショナルノックアウトマウスも作成したが、本研究室内の別の研究課題で共通に作成したマウスであり、本年度は本研究の経費としては使用しなかった。またCOVID-19の蔓延によって、海外だけでなく国内の学会にも出張が出来ず、成果の発表の多くは次年度に持ち越しの予定とした。 今後も実験・解析を進めていくために物品や消耗品の購入、実験動物の維持費、また組織学的解析に際しては画像解析用のPCやソフトなどを購入する必要が生じる可能性もある。解析が終了すれば、成果発表に関して学会出張費・論文作成・校閲などの費用が生じる。
|