2019 Fiscal Year Research-status Report
生体膜リン脂質操作による神経障害性疼痛の発症維持メカニズムの解明
Project/Area Number |
19K16938
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Research Institution | National Center for Global Health and Medicine |
Principal Investigator |
山本 将大 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 特任研究員 (50825693)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生体膜リン脂質 / リゾリン脂質アシル転移酵素 / 後根神経節 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体内脂質は,細胞膜の構成,エネルギー貯蔵源,シグナル伝達など,多彩な生体機能を担っている。本研究は,末梢神経損傷後の後根神経節および脊髄組織における脂質変化,特にリン脂質の変化に注目して神経障害病態の発症維持メカニズム解明を目指している。 外傷性の神経障害性疼痛モデルマウスの解析から,後根神経節および脊髄組織において神経損傷後に顕著な発現変動を示す脂質関連分子を複数見出した。さらにリピドミクス解析を行い,様々な分子種の膜リン脂質や脂質メディエーターが変動することが明らかになった。特に,リン脂質性脂質メディエーターである血小板活性化因子(PAF)量の経時的な変化を捉えることに成功し,神経損傷後の後根神経節においてはPAF合成酵素の増加のみならず,PAF分解酵素が発現低下することを明らかにした。一方で,脊髄においては分解酵素の発現変化は認められず,末梢神経系である後根神経節と中枢神経系である脊髄においてPAFが異なる制御を受けていることが示唆された。 また,リン脂質生合成酵素の後根神経節における発現局在解析を行い,特定の神経亜集団に発現する酵素,非神経細胞のみに発現する酵素,あらゆる細胞種に発現する酵素など,各酵素によって特徴的な発現パターンを示すことを見出した。各酵素はリン脂質合成時に好んで使用する脂肪酸種がそれぞれで異なることから,細胞集団ごとに異なる膜リン脂質組成を有し,特徴的な生理機能を発揮していることが考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
神経損傷によって発現増加するリン脂質性の脂質メディエーターPAFの経時的な変化を捉えることに成功し,その制御機構の一端を明らかにすることができた。また,細胞集団ごとに特徴的なリン脂質生合成酵素を発現していることを見出せたため。
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Strategy for Future Research Activity |
PAF制御に関わる遺伝子ノックアウトマウスを用いて,神経損傷後の疼痛症状におけるPAFシグナルの役割を明らかにする。さらに,質量顕微鏡を用いて細胞集団ごとの膜リン脂質組成を捉え,各LPLAT酵素遺伝子ノックアウトマウスを活用した膜リン脂質操作を行うことで感覚情報伝達機構解明を目指す。
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Research Products
(5 results)