2020 Fiscal Year Research-status Report
臨床情報・ゲノム情報を活用した統合失調症神経ネットワーク形成障害の神経病理解析
Project/Area Number |
19K17059
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 洋太 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (90754945)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / 神経病理 / 死後脳 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年に引き続いて、例数を増やすために関連施設において死後脳の収集・蓄積を行うとともに、生前の臨床診断、臨床経過(発症年齢、罹病期間、臨床症状、薬剤、併存身体疾患等)、病前の社会適応、家族歴、神経画像等の臨床情報の収集を行った。これらの臨床情報及びCPCによって確認した神経病理学的診断情報を漸次データベース化した。 前年度までの検討で、有意な神経変性疾患を認めない認知症症状を示す統合失調症症例群を、この疾患の表現型のひとつと考え、本年度は、引き続き、その中の3例に関し、さらに詳細に臨床情報と神経変性疾患の病理所見との比較・検討を行った。神経原線維変化、老人斑、嗜銀顆粒、レビー小体等の病変はごく軽度認められるものの、既知の神経変性疾患の病理のみで、これらの症例の認知症症状を説明することは困難であった。これらの症例では、統合失調症自体の病態による脳の脆弱性に、ごく軽度の加齢性変化が加わり、重度の認知機能低下を引き起こしている可能性が推量された。 また、稀なゲノム変異を有する統合失調症では、22q11.2欠失を有する統合失調症において、大脳皮質におけるmyelin oligodendrocyte glycoprotein(MOG)の発現の変化(皮質の層構造における発現の変化、ミエリンの厚みの変化)、白質におけるNogo-A陽性オリゴデンドロサイトの密度減少を病理所見として確認していたが、これらの神経病理学的所見と臨床経過(生前の神経画像所見や知的能力、薬歴や薬剤への治療反応性を含む)との関連を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度も引き続き例数を増やすために死後脳の収集・蓄積を行うことは目標の一つであったが、2020年は関連施設において、15例程度の死後脳の収集・蓄積を行うことができた。さらに、これらの症例に関して、順次、生前の臨床診断、臨床経過、病前の社会適応、家族歴、神経画像等の臨床情報の収集及び一般神経病理所見の検討を行い、詳細な臨床情報と神経病理学的診断情報のデータベース化をさらに推し進めた。 有意な神経変性疾患を認めない認知症症状を示す統合失調症症例群については、その中の3例に関しさらに詳細な臨床神経病理学的評価を行い、統合失調症の脳病態と加齢性変化との関係について、一定の推量をすることができ、論文として投稿、受理された。 また、稀なゲノム変異を有する統合失調症においては、前年のGLO1フレームシフト変異を有する統合失調症に加え、22q11.2欠失を有する統合失調症において、それまでに見出した神経病理学的所見と臨床経過との関連を検討し、これらを論文として投稿、受理された。 これらのことから、概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
見出した特定の表現型の死後脳組織を免疫組織学的な手法を用いて観察を行う。有意な神経変性疾患を認めない認知症症状を示す統合失調症症例群はその症例数は少なく、一定の臨床表現型を抽出したとはいえ、生物学的な背景病態の異質性はやはり想定される。 脳画像上、大脳皮質の萎縮を認めるが、神経病理学的には既存の変性疾患の所見を認めず、X染色体に大規模な重複を持つ統合失調症死後脳の皮質萎縮の組織病理学的背景を先ず明らかにすることも、引き続き考慮する。
|
Causes of Carryover |
年度当初、COVID-19の感染拡大が研究環境に影響を及ぼすことが懸念された。そのため、一部計画を変更し、本年度は現在まで得られた臨床データ、神経病理所見をまとめなおすことを優先した。従って、当初計画していた免疫組織染色に係る費用を一部翌年度に持ち越すこととした。
|
Research Products
(12 results)
-
-
[Journal Article] Structural diverseness of neurons between brain areas and between cases.2021
Author(s)
Mizutani R, Saiga R, Yamamoto Y, Uesugi M, Takeuchi A, Uesugi K, Terada Y, Suzuki Y, De Andrade V, De Carlo F, Takekoshi S, Inomoto C, Nakamura N, Torii Y, Kushima I, Iritani S, Ozaki N, Oshima K, Itokawa M, Arai M.
-
Journal Title
Transl Psychiatry.
Volume: 11
Pages: 49-49
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Journal Article] The accumulation of advanced glycation end-products in a schizophrenic patient with a glyoxalase 1 frameshift mutation: An autopsy study.2020
Author(s)
Torii Y, Iritani S, Sekiguchi H, Habuchi C, Fujishiro H, Kushima I, Kawakami I, Itokawa M, Arai M, Hayashida S, Masaki K, Kira JI, Kawashima K, Ozaki N.
-
Journal Title
Schizophr Res.
Volume: 223
Pages: 356-358
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Morphological alteration of myelin-oligodendrocytes in a schizophrenic patient with 22q11.2 deletion syndrome: An autopsy study.2020
Author(s)
Torii Y, Iritani S, Marui T, Sekiguchi H, Habuchi C, Fujishiro H, Kushima I, Oshima K, Niizato K, Hayashida S, Masaki K, Kira JI, Yoshida M, Ozaki N.
-
Journal Title
Schizophr Res.
Volume: 223
Pages: 353-355
DOI
Peer Reviewed
-
[Journal Article] Globular glial tauopathy Type I presenting with behavioral variant frontotemporal dementia.2020
Author(s)
Hirano M, Iritani S, Fujishiro H, Torii Y, Kawashima K, Sekiguchi H, Habuchi C, Yamada K, Ikeda T, Hasegawa M, Ikeuchi T, Yoshida M, Ozaki N.
-
Journal Title
Neuropathology.
Volume: 40
Pages: 515-525
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Presentation] 精神科ブレインバンク各拠点からの成果と今後の臨床への展望-精神科ブレインバンクへの期待その4- 名古屋ブレインバンクコンソーシアムのこれまでの取り組みと展望2020
Author(s)
関口 裕孝, 藤田 潔, 羽渕 知可子, 合澤 祐, 粉川 進, 鳥居 洋太, 三輪 綾子, 川島 邦裕, 岩井 清, 平野 光彬, 吉田 眞理, 入谷 修司
Organizer
第116回日本精神神経学会学術総会
-
-
[Presentation] 臨床的に行動異常型前頭側頭型認知症と診断された精神病症状を伴うGlobular glial tauopathy Type Iの一剖検例2020
Author(s)
平野光彬, 鳥居洋太, 藤城弘樹, 三輪綾子, 山田健太郎, 関口裕孝, 羽渕知可子, 合澤祐, 岩井清, 川島邦裕, 池田知雅, 吉田眞理, 入谷修司
Organizer
第61回日本神経病理学会