2019 Fiscal Year Research-status Report
肥満関連大腸発がんにおけるTET2の関与~代謝と大腸発がんを繋ぐ分子機序の解明~
Project/Area Number |
19K17389
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
今 孝志 山形大学, 医学部, 医員 (10829740)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | TET2 / 5hmc / 大腸癌 / 肥満 / メタボリックシンドローム |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満、メタボリックシンドローム増加は、本邦における大腸癌増加の主な要因であるが、なぜ肥満やメタボリックシンドロームが大腸発癌を起こすのか、その直接的な分子機序については不明な点が多い。近年、細胞内のエネルギーセンサーであるAMPKを介した腫瘍抑制因子TET2の活性調節がDNAのエピジェネティック修飾を制御し、発癌に促進的に作用することが報告され、TET2が肥満、メタボリックシンドロームによる大腸発癌に深く関与している可能性がある。本研究は、肥満関連大腸発がん機序におけるTET2の役割を明らかにすることを目的とする。 本年度は大腸腺腫・癌の切除標本を用いて肥満関連大腸腫瘍のゲノムバリアントの特徴を検討した。TET2のバリアントの頻度は、腺腫に比し癌で頻度が高い傾向にあった。検討した409遺伝子のバリアントの頻度は肥満者と非肥満者で明らかな差は認められなかったが、肥満者の腫瘍で特にバリアント頻度が高い遺伝子を同定した。現在さらに詳細な検討を行っている。 TET2は5-メチルシトシンを酸化し、5-ヒドロキシシトシン(5-hmc)へ変換させ、DNAの脱メチル化機能に関わっているとされ、この機能不全が発癌に関与している可能性がある。そこで肥満関連腫瘍患者のゲノムおよび腫瘍部の5-hmcレベルを検討した。ゲノムDNAの5hmcレベルは肥満者と非肥満者で明らかな差は見られなかった。大腸腫瘍における5-hmcレベルは肥満者と非肥満者で差がある可能性を見出しており、更なる検討を重ねている。 また大腸癌細胞株を用いて高グルコース、高インスリン状態におけるTET2mRNAの発現変化や5-hmcレベルの変化を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TET2遺伝子を含む癌関連409遺伝子のバリアントに加え、in vitroでの解析も遂行しており、おおむね予定通り研究は進捗している。
|
Strategy for Future Research Activity |
肥満関連大腸腺腫と癌のゲノム解析は症例を収集して継続して行う。更に大腸腺腫、癌の組織におけるTET2のmRNA及びリン酸化蛋白発現をRT-qPCRおよびウエスタンブロットを用いて明らかにする。また同部における5hmcレベルを検討し、これらの発現レベルと肥満や代謝異常との関連性を明らかにする。高グルコース、高インスリン状態、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸投与によってTET2mRNAレベルが大腸癌細胞株でどのように変化するか検討する。
|
Causes of Carryover |
本研究で使用するための核酸抽出キットに手持ちがあったため、それらを使用してから新たなキットを購入したたため、本年度使用予定していたものより少なく済み、次年度への使用額が生じた。
|