2020 Fiscal Year Research-status Report
RIP-Seq法を用いたRIG-IのRNA decoy探索と核酸医薬への応用
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19K17427
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
村居 和寿 金沢大学, 保健学系, 助教 (10828099)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自然免疫 / C型肝炎 / B型肝炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス (HBV) や C型肝炎ウイルス (HCV) 感染症は、肝細胞がんを誘発する重大な感染症である。現在、HBVやHCV感染に起因する肝病態の進展を防ぐための有効な治療法は確立されておらず、新規治療法の開発が急務である。retinoic acid-inducible gene I (RIG-I) は、細胞質内に侵入したウイルスを認識して免疫応答をスタートさせる司令塔分子である。 HBVやHCVは、RIG-Iによる免疫応答を巧みに回避して持続感染を成立させるが、その逃避機構の全容は解明されていない。申請者は、RIG-Iによるウイルス認識を制御する宿主因子としてSelenoprotein P (SeP) を同定し、ウイルス感染時の免疫逃避機構に関する重要な知見を得た。 SePのmRNAは、生体リガンドの結合を阻害する部分断片 (Decoy RNA) としての機能を有しており、RIG-I のタンパクと結合し相互作用することでウイルス認識能を著しく低下させ、免疫応答を負に制御していた。RIG-IはHBVやHCVだけでなく、インフルエンザウイルスやセンダイウイルスをはじめとした広範なRNAウイルスを認識して、抗ウイルス効果を発揮することが知られている。また近年、肝内のRIG-Iの発現が、肝細胞がんに対する治療効果や生存率に関連していることが報告されている。RIG-Iの新たな制御機構を明らかにした本研究は、ウイルス感染による病態を制御するための新規治療法考案に大きく貢献すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者は、細胞内RNAセンサーであるRIG-Iの機能を制御する宿主RNAを同定し、その制御メカニズムを明らかにした。現在までに、RIG-Iが認識する生体由来の核酸リガンドパターンを詳細に解析し報告した論文はほとんどない。本知見は、RIG-Iを介したウイルスに対する自然免疫応答に関する基礎研究を発展させると推測される。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、RIG-Iが肝細胞がん(HCC)に対する治療効果を規定する因子として報告され、その機能について関心が高まっている。RIG-Iに関する論文報告は多く存在しているが、肝がん微小環境においてRIG-Iがどういった機能的役割を担っているのか、あるいは、どういった制御を受けているのかは明らかにされていない。その背景には、肝がん微小環境の研究に適したマウスモデルがほとんど存在しないという問題があげられる。当研究室では、独自の手法で新規マウス肝癌細胞株『MHCF1』と、胆管癌細胞株『MHCF5』を樹立し、C57L/B6 マウスを用いた肝がん移植モデルの開発に成功した。今後本モデルを用いて、肝がん微小環境におけるRIG-Iの機能的役割を明らかにしていきたいと考える。
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