2019 Fiscal Year Research-status Report
大腸鋸歯状病変の発癌過程における責任分子の同定と臨床応用
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19K17437
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
庄野 孝 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (40632667)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SSAP / miRNA / マルチオミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当科における先行研究において近位側大腸のSessile Serrated Adenoma/Polyp (SSAP)から発生した大腸癌を内視鏡にて切除し、顕微鏡下にレーザーを用いて、正常粘膜、SSAP、癌部に分離した。それぞれのホルマリン固定切片よりDNA、RNAを抽出し、特にmiRNAについて網羅的に定量化を行い、正常粘膜からSSAP、癌の間で発現変化したmiRNAの発現プロファイルを同定した。具体的には癌部と正常粘膜間で9遺伝子、癌部とSSAP間で8遺伝子、SSAPと正常粘膜間で24遺伝子の有意な変化を認めた。 今年度はさらに正常粘膜、SSAP部から、より多症例の凍結生検検体を採取し、これを用いて上記miRNA発現変化の検証を行うことで、統計的に有意な変動遺伝子として3種類のmiRNAまで絞り込んだ。同定したmiRNAの一部をヒト大腸癌株細胞Lovo, Oums-23に導入し、メッセンジャーRNA(mRNA)発現の変化を調べたところ、いくつかの上皮間葉転換(EMT)関連の遺伝子発現変化を認めた。さらに同じ実験系にて細胞遊走アッセイを行ったところControl群と比してmiRNA mimic群で遊走促進を認めた。 加えてSSAP、腺腫、側方発育型腫瘍(LST)など、大腸腫瘍の形態異型が生じる機序を考察する必要性があると考え、上記に加え、ポリープ様腺腫、LSTの内視鏡組織標本を用いて、正常部、腫瘍部に分離し、miRNA、mRNAの発現プロファイルを調べた。得られたデータを統合的に解析することで、ポリープ様腺腫、LST間で発現変動するmiRNAとその標的mRNAを絞り込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019度は内視鏡的に採取されたSSAPのmiRNA解析を発展、検証することで複数の候補遺伝子を見出し、病態が進展する際のRNA発現変化とそれに伴う細胞動態の変化を捉えた。今後、引き続きマルチオミクス解析を行うことで、miRNAのターゲット分子の動態と、これらの変化によるSSAP化ならびに発癌増殖進展機序との関連の詳細を、培養細胞ならびに臨床サンプルを用いて詰めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
SSAP、SSAPより発生した大腸癌、背景の正常粘膜のホルマリン固定標本、凍結標本の採取を引き続き行い、N数を増やす。また、それぞれより抽出したタンパク質、mRNAを用い、網羅的なプロテオーム解析やトランスクリプトーム解析を行い、それらを統合することで、SSAP進行、発癌に関与する分子群を絞りこむと同時に、既に得られたmiRNAの発現解析結果を統合し、SSAPが癌へと進展するserrated pathwayの分子基盤となる責任分子とそれを制御するmiRNAを同定する予定である。 臨床応用としては最終的には、生体試料(内視鏡による生検検体や糞便)を用いてSSAPの早期診断法や治療戦略を構築することを目指す。
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Causes of Carryover |
1.当初の計画では、切除後ホルマリン固定しレーザーにて分離された標本からタンパク質を抽出しプロテオーム解析をする予定であったが、特に正常粘膜においてタンパク質の抽出に際して均一な質を保つことが予想外に難しく、採取法を検討しなおした。そのためプロテオーム解析費用の一部が計画通りに使用されなかった。タンパク質の解析は次年度以降は生検後凍結された組織からの抽出に計画を立てなおし、次年度以降引き続き解析を行う予定である。さらに切離標本のタンパク質の解析は免疫組織染色など他の手法も積極的に検討する予定である。
2. 標本からの核酸の抽出と解析は予定通り順調に進み、得られた結果の多症例による検証も進んでいる。核酸検査においては実験の効率化などにより当初計画していたよりも物品費を安く抑えることができたため未使用額が発生したが,引き続き,次年度以降も物品購入に使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Continuous Anticoagulation and Cold Snare Polypectomy Versus Heparin Bridging and Hot Snare Polypectomy in Patients on Anticoagulants With Subcentimeter Polyps2019
Author(s)
Takeuchi Yoji, Shono Takashi, Inoue T, Ohda Y, Kobayashi N, Tanuma T, Sato R, Sakamoto T, Harada N, Chino A, Ishikawa H, Nojima M, Uraoka T et al. for the Madowazu Study Group
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Journal Title
Annals of Internal Medicine
Volume: 171
Pages: 229~229
DOI
Peer Reviewed / Open Access