2019 Fiscal Year Research-status Report
患者心筋線維芽細胞を用いた拘束型心筋症の病態解明と新たな治療ターゲットの同定
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19K17561
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石田 秀和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50467552)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 心筋線維芽細胞 / 拘束型心筋症 / RNA-seq / エクソーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
当院で診療している小児特発性拘束型心筋症患者から、心筋線維芽細胞の初代培養を樹立した。これは、心内膜心筋生検の際や、補助人工心臓装着の際、あるいは心臓移植の際に採取した心筋組織から培養している。この際には、本学倫理審査委員会の承認に基づいた説明同意書により、本人あるいは両親に書面での同意のうえ研究を行った。樹立した心筋線維芽細胞は、血管内皮細胞や平滑筋細胞の混入のないことを確認した。まずは、上記のうち5例について、細胞生物学的特性を検証した。対照としては、コマーシャルアベイラブルな正常心筋線維芽細胞を3ライン用いた。細胞増殖能について、EdUの取り込み能を測定した。定常状態での培養では、細胞増殖能については、拘束型心筋症と正常の心筋線維芽細胞では有意差を認めなかった。次に、アポトーシスについて検証した。通常酸素下での培養に加えて、低酸素(1%酸素)下での培養、また、通常の10%FBS添加と無血清培地での培養の組み合わせでアポトーシス誘導を行い、Caspase3の免疫染色にてアポトーシス細胞を検出した。しかし、どの組み合わせにおいても拘束型心筋症由来心筋線維芽細胞と正常心筋線維芽細胞との間では、有意差を認めなかった。さらに、細胞接着能について評価した。細胞播種12時間後に接着している心筋線維芽細胞について、細胞数をカウントした。この実験においても、拘束型心筋症由来心筋線維芽細胞と正常心筋線維芽細胞とでは特に有意な細胞接着能の違いを見出すことはできなかった。一方で、正常心筋細胞との共培養においては、収縮する心筋細胞の細胞数に有意な違いを認め、拘束型心筋症由来心筋線維芽細胞ではbeatingする心筋細胞が有意に少なかった。今後さらに、細胞生理学的解析や共培養の解析を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
解析を行うべき心筋線維芽細胞については、問題なく初代培養ができており、細胞の生理学的特性の解析についても、当初の予定通り順調に進行している。正常心筋細胞として、患者由来iPS細胞から、心筋細胞への分化誘導についても問題なく行えている。さらに、共培養系においては、ラットの心筋細胞を用いることで、より分化段階の高い心筋細胞で、かつ、心筋細胞における発現変化についても、ラット特異的なプライマーを作成することで、検出できるという系を確立することができている。また、モーションアナライザについても、予備実験において再現性を持って心筋細胞の動きをベクトル解析することが出来ており、共培養系においても、測定が可能であることを実証できている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに心筋線維芽細胞の細胞生物学的挙動について解析していく。具体的には、スクラッチアッセイによる細胞遊走能についての解析や、α-SMAによる免疫染色を行うことによって、myofibroblastへの活性化能について、通常酸素下や低酸素培養下、さらに無血清培地を用いた刺激を加えることによって解析する予定である。 共培養系については、direct co-cultureとindirect co-cultureの系を行う予定である。それぞれの系において、心筋細胞のベクトル解析を行うことで、心筋線維芽細胞が心筋細胞の収縮能あるいは拡張能に与える影響についての解析を行っていく。また、その変化があった場合には、心筋細胞の発現変化を検討するため、ラット特異的なプライマーを用いた、定量的リアルタイムPCRを行うことで、その影響を明らかにする。心筋線維芽細胞のRNA-seq解析も進めている。網羅的発現解析によって、疾患特異的な心筋線維芽細胞がどのような発現パターンの特性を示すのか、あるいは特異的なシグナル経路の活性化や低下が認められるのかどうかを検証していく予定である。
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