2019 Fiscal Year Research-status Report
TGF-βによる糸球体上皮細胞障害とWT1の発現低下機序について
Project/Area Number |
19K17696
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
浜谷 博子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40760658)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | WT1 / TGF-β / 糸球体上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
Wilms’ tumor 1 (WT1) 遺伝子は腎臓の分化に重要な転写因子で、成熟腎では糸球体上皮細胞に強く発現する。本研究はFSGSや糖尿病性腎臓病で発現が増加するTGF-βによるWT1の発現低下、糸球体上皮細胞障害の機序を解明することを目的としている。 WT1遺伝子のエピジェネティクスによる遺伝子発現の制御の可能性について検討した。ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)活性を持つp300がWT1の発現を上昇させることからHAT活性を持つ薬剤を用いて糸球体上皮細胞への作用を検討したところ、WT1のmRNAの発現の軽度上昇と、間葉系のマーカーであるCol1A1、Snail、VimentinのmRNAの低下を認めた。今後は治療効果があるか腎炎モデルマウスへの投与を検討している。 WT1の機能や細胞形態を変化させることが知られているWT1+KTS/-KTSのアイソフォームの比率が培養糸球体上皮細胞にTGF-βを添加した際に変化するか次世代シークエンサーを用いて検討した。TGF-βを投与してもアイソフォームの比率に大きな変化を認めなかったが、その後TGF-βなしで2日間培養して細胞形態が回復した際に+KTSアイソフォームを持つisoform F(NM_001198552)の比率の上昇を認めた。細胞骨格の修復に+KTSを含むアイソフォームが重要な可能性が示唆された。 また、WT1と同様にTGF-βを投与した際に発現が低下し、その後TGF-βなしで培養すると発現が回復する転写因子を見つけ解析を進めた。糖尿病性腎臓病のモデルのdb/dbマウスとそのコントロールマウスの糸球体をダイナビーズにより採取し、RNAを抽出して発現を比較したところその遺伝子の発現の低下を認めた。今後、ヒトの糸球体上皮細胞の培養細胞を用いてCRISPR/Cas9でノックダウンし機能を解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)エピジェネティクスによるWT1遺伝子の発現制御、2)WT1のアイソフォームの比率の変化、3)WT1と同様の発現変化を示した転写因子の解析を行い上記の結果を得られた。WT1のアイソフォームについては次世代シークエンサーを用いて解析を行い、+KTSアイソフォームの重要性が示唆される結果が得られた。糸球体上皮細胞障害からの回復に役立つ可能性がある。また、WT1と同様の発現変化を示した転写因子については糖尿病性腎症のモデルマウスにおいても予想した通りの発現低下を確認し、糸球体上皮細胞障害に関与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
1)エピジェネティクスによる遺伝子発現の制御について、培養糸球体上皮細胞にTGF-βの投与を行い、ヒストン修飾が変化するかChipアッセイにて確認を進める。変化を認めた因子の阻害薬やノックダウンによりTGF-βによるWT1の低下を阻害可能か検証する。 2)WT1のアイソフォームについて糸球体上皮細胞における機能の解析を進める。 3)TGF-βの投与の有無によりWT1と同様の発現変化を示し、糖尿病性腎臓病のモデルマウスで発現低下を認めた転写因子について糸球体上皮細胞における機能の解析を進め、TGF-βによる糸球体上皮細胞障害の機序を明らかにする。
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