2020 Fiscal Year Research-status Report
TGF-βによる糸球体上皮細胞障害とWT1の発現低下機序について
Project/Area Number |
19K17696
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
浜谷 博子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (40760658)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | WT1 / TGF-β / 糸球体上皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
WT1遺伝子は腎臓の分化に重要な転写因子で、成熟腎では糸球体上皮細胞に強く発現する。本研究はFSGSや糖尿病性腎臓病で発現が増加するTGF-βによるWT1の発現低下、糸球体上皮細胞障害の機序を解明することを目的としている。 WT1遺伝子は36種類以上のアイソフォームがあるが、exon9の3つのアミノ酸(KTS)の有無(+KTS/-KTS)により機能が異なることが知られている。また、exon5の有無(+Ex5/-Ex5)についての白血病の領域で研究が進んでいる。WT1のアイソフォームの比率が培養糸球体上皮細胞にTGF-βを添加した際に変化するか、昨年度次世代シークエンサーを用いて検討した。同様の結果が得られるかWT1+KTS/-KTSアイソフォームそれぞれにかかるプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。検量線用のコントロールはexon4から10の領域をPCRで増幅し、シークエンスにて配列を確認後にTAクローニングを行い制限酵素処理したものを用いた。次世代シークエンサーの結果と同様に、TGF-βを投与してもアイソフォームの比率に大きな変化を認めなかったが、その後TGF-βなしで2日間培養して細胞形態が回復した際に+KTSアイソフォームの比率のわずかな上昇傾向を認めた。さらに、4つのアイソフォーム(+Ex5/+KTS、+Ex5/-KTS、-Ex5/+KTS、-Ex5/-KTS)の比率を確認するためDNAシークエンサーを使用しフラグメント解析を行っている。 また、WT1と同様にTGF-βの投与により発現が低下し、その後TGF-βなしで培養すると発現が回復したある転写因子についてマウスとラットの免疫蛍光染色にて糸球体上皮細胞のマーカーと共発現することを確認した。今後機能を解析するためヒトの糸球体上皮細胞の培養細胞を用いてshRNAレンチウイルスでノックダウンした細胞を作製した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は1)エピジェネティクスによるWT1遺伝子の発現制御、2)WT1のアイソフォームの比率の変化、3)WT1の発現を制御する因子の研究を行うことによりTGF-βによるWT1発現低下や糸球体上皮細胞障害の機序を解明することを目的としている。今年度は2)WT1のアイソフォームの比率の変化について上記のように次世代シークエンサーとリアルタイムPCRで同様の結果を得られた。細胞骨格の維持に+KTSアイソフォームが重要である可能性が示唆される。3)WT1の発現を制御する因子について今年度は遺伝子や化合物をいくつか見つけており、今後研究を進め予定である。また、WT1と同様の発現変化を示したある転写因子について昨年度に糖尿病性腎症のモデルマウスにおいて発現の低下を確認したが、免疫蛍光染色にて発現部位が糸球体上皮細胞であることを確認できた。また、ヒトの糸球体上皮細胞の培養細胞を用いて目的の遺伝子をshRNAレンチウイルスでノックダウンし、発現が低下していることを確認できた。今後機能解析をすすめることによりTGF-βによる糸球体上皮細胞障害の機序の解明を進める予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
WT1のアイソフォームの比率についてフラグメント解析を進める。糸球体上皮細胞の培養細胞に4つのアイソフォームを共発現し、それどれのアイソフォームの機能の解析を進める。 WT1の発現を変化させる遺伝子や化合物について研究を進める。 現在研究を進めているTGF-βの投与の有無によりWT1と同様の発現変化を示した遺伝子について、ノックダウンした細胞を用いて機能の解析を進め、TGF-βによる糸球体上皮細胞障害の機序を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
昨年度注文したものの中に年度内に納品できなかったため。今年度の実験の試薬の注文に使用します。
|