2020 Fiscal Year Annual Research Report
血管作動性ペプチドCNPの糖尿病腎症における病態生理学的意義の解明
Project/Area Number |
19K17727
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
延生 卓也 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 流動研究員 (70824613)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | C型ナトリウム利尿ペプチド / 糖尿病腎症 / 生理活性ペプチド / 炎症・線維化 / 血管内皮細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病腎症等の腎臓疾患は、腎臓間質における血管内皮障害に起因する炎症・線維化を主体とする病態である。一方、C型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)は血管内皮細胞から主に産生され、血管機能障害改善作用、抗炎症・線維化抑制作用が報告されている。 本研究では腎臓疾患におけるCNPの作用を解明することを目的とし、昨年度は腎線維化モデルにおいて腎臓血管内皮細胞のCNP発現が上昇することに加え、血管内皮細胞特異的CNP過剰発現マウス(E-CNP Tg)において腎臓皮質の線維化が抑制されることを見出した。 そこで本年度は、CNPによる腎臓線維化抑制作用のメカニズム解明に焦点を当てた。まず、E-CNP Tgの腎臓皮質領域特異的なRNA-seq解析を行ったところ、3種類のエンリッチメント解析で共通して、細胞分裂に関わる遺伝子群の発現が減少していた。そこで、CNPによる線維化抑制作用は腎臓線維芽細胞の増殖抑制によると予想し、2種類の腎臓由来線維芽細胞(ラット腎臓線維芽細胞NRK49Fとマウスの腎臓から調製した初代線維芽細胞)を用いてCNPの作用を解析した。まず、両種の腎臓由来線維芽細胞は共にCNP受容体(GC-B)を発現し、CNP刺激によりGC-Bの細胞内セカンドメッセンジャーcGMPの容量依存的な産生亢進を確認した。細胞増殖に対するCNPの作用については、BrdU取り込みを指標として評価したところ、CNPはこれら線維芽細胞の細胞増殖を抑制した。加えて、先のRNA-seq解析にて変動した細胞分裂関連因子(PLK1、Ccnb2、Espl1)の mRNA発現を解析した結果、増殖刺激によるこれらの発現上昇は、CNP添加により有意に抑制された。 これらの結果より、血管内皮細胞から産生されるCNPは線維芽細胞の細胞分裂を抑制する事により、腎線維化の進行を妨げていることが明らかとなった。
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